トランプ大統領が兼ねてから主張してきたグリーンランド問題が動き出した。3日未明にベネズエラを奇襲、マドゥロ大統領を拘束した翌日同氏は記者団に「グリーンランドは絶対必要だ」と協調した。そしてその翌日、今度はホワイトハウスでレビット報道官が「トランプ大統領は、グリーンランドの領有がアメリカの国家安全保障上の優先事項であり、北極圏での敵対勢力(ロシア、中国)の抑止に不可欠であることを明確に表明している」と説明した。そのうえで「大統領とそのチームは、この重要な外交政策目標を達成するための様々な選択肢を検討中であり、アメリカ軍の活用は常に最高司令官が自由に使える選択肢の一つだ」と主張した。要するに軍事力を使ってでも、必要なことをすると言っているのだ。トランプ大統領に残された任期はあと3年。いますぐグリーンランドを支配できなくても、3年以内にはなんらかの形で決着を見るのではないか。国際安全保障環境の激変が始まったのだ。
ベネズエラ、グリーンランド、America First、MAGA(Make America Great Again)、ドンロー主義、この5つの言葉から連想できるのは西半球と東半球だ。西半球に所属するのは主に南北アメリカ大陸とグリーンランド。東半球は日本を始め中国、ロシア、E U、アフリカなどトランプ大統領が心情的に毛嫌いしている国々だ。ウクライナ戦争、ガザや中東の紛争地帯は全部ここに含まれる。紛争の種が尽きないアフリカも東半球に所属している。ベネズエラ問題の本質はこの国からロシアと中国の支配権を排除することだ。ベネズエラはチャベス前大統領の時代からロシア、中国という強権独裁国家と親密な関係を築いてきた。これは裏返せば反米強行主義である。グリーンランドを領有し南アメリカ大陸からロシアと中国を排除する。こうして地球の西半分を光輝く地域に作り変える。これがトランプ氏の思い描く西半球の近未来像であり、極論すれば東半球の紛争地帯を見捨てる構想だろう。America FirstもMAGAも、グリーンランドを占有して実現する理想郷なのだ。
日本は東半球に所属している。トランプ氏の国際戦略にとっては、日米同盟破棄など屁のカッパに過ぎない。日本はトランプ戦略から取り残される可能性も。「ドンロー主義」の顕在化と共に安全保障リスクが強まっているのだ。それを察してか、高市総理はトランプ大統領との会談に向けてセットアップを急ぐ。その前に13日に韓国の李在明大統領、16日にはイタリアのメローニ首相と東京で初の会談を行う。中国はマドゥロ大統領が拘束される前日に、同大統領と代表団が会談している。米国の激烈な軍事介入をまったく知らなかったのだろう。多分中国も日本も、トランプ氏の真意を測りかねているのだ。問題は東半球だ。ロシアと中国、イランといった強権的独裁国家、EU、イスラエル、日本など西側諸国が併存する。トランプ政権のE U嫌いは徹底している。リーダーもいなければ、指導者もいない。東半球は東西問題も南北問題も同居する紛争地域なのだ。トランプ氏は腹の中で「勝手にしやがれ」と思っているのかもしれない。東半球の泥沼化が見え始めたような気がする。
