• S&P500種は最高値更新も上値重い、米国債は長期債中心に利回り上昇
  • 円は対ドルで下落、高市首相が衆院解散に踏み切るとの観測が重し
S&P500種は最高値更新も上値重い
S&P500種は最高値更新も上値重いPhotographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

12日の米金融市場では、朝方に「米国売り」の動きが広がった後、株と国債が日中の安値水準からは値を戻す展開となった。ただ、トランプ政権が連邦準備制度理事会(FRB)への攻撃を強め、中央銀行の独立性を巡る懸念が高まる中、慎重姿勢が優勢だった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6977.2710.990.16%
ダウ工業株30種平均49590.2086.130.17%
ナスダック総合指数23733.9062.550.26%
Key Speakers At NABE Annual Meeting
パウエルFRB議長Photograppher: Hannah Beler/Bloomberg

  S&P500種株価指数は下げを埋め、最高値を更新したものの、金融政策への干渉を巡る不安で上値は抑えられた。

  キャピタル・ワン・ファイナンシャルやアメリカン・エキスプレス(アメックス)、JPモルガン・チェースは下落。クレジットカード金利の上限を1年間、10%に設定するようトランプ米大統領が要求したことに反応した。アルファベットは上昇し、時価総額が4兆ドル(約631兆円)を突破した。

関連記事:キャピタル・ワンや銀行株下落、トランプ氏がカード金利上限要求 (1)

  パウエルFRB議長は11日、FRB本部の改修工事を巡る昨年6月の議会証言に関連して、刑事訴追の可能性を示唆する大陪審への召喚状を司法省から受け取ったと明らかにした。

  一方、トランプ氏は同日のNBCニュースのインタビューに応じ、司法省が連邦準備制度を捜査していることについて、自身は一切把握していないと述べた。

関連記事:FRBに司法省が召喚状、訴追も示唆-パウエル議長は断固たる姿勢表明

  FRBが政府の干渉から独立しているとの認識は、米国市場の根幹をなす前提であり、その見方に変化が生じれば市場心理の重しとなり得る。

  エバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は、独立性を巡るリスクは2026年を通じて主要テーマとなる可能性が高いが、市場は「本格的な大荒れ」にならない可能性もあるとみている。

  「投資家はトランプ氏によるFRBいじめに慣れている。パウエルFRB議長の任期は残り4カ月しかなく、直ちに解任されるという脅威はない。パウエル氏自身も従来通り職務を続ける考えを示している」と述べた。

  グハ氏はまた、米国市場が落ち着きを取り戻している状況については、2通りの解釈が成り立つと説明。「1つ目は、こうした問題は市場にとって重要ではないという見方だ」と指摘。「2つ目は、極めて重要ではあるものの、この動きはいずれ行き詰まり、政権は緊張緩和の出口を模索すると考えられていると」とし、「当社は明確に後者の立場にある」と述べた。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は、地政学や政策リスク、マクロ経済の不確実性など、ノイズが増す環境にもかかわらず、投資家がほとんど気にしていないように見える点が、今の市場を特徴づけていると指摘した。

  13日には12月の米消費者物価指数(CPI)が公表される。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは、前年同月比2.7%上昇の予想。実際にそうなれば、11月の2.6%上昇をわずかに上回る伸びにとどまる。11月は2021年以来の低い伸びだった。

外為

  外国為替市場でドル指数は下落。トランプ政権がFRBへの攻撃をエスカレートさせたことから、中銀の独立性を巡る懸念が強まった。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は5営業日ぶりに下げて、約3週間ぶりの大幅下落。

  円は対ドルで値下がりし、158円台前半。一時は上昇する場面もあったが、高市早苗首相が衆院解散に踏み切るとの観測が強まっており、円の重しになっている。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1209.56-2.14-0.18%
ドル/円¥158.14¥0.250.16%
ユーロ/ドル$1.1668$0.00310.27%
米東部時間16時38分

  バンダ・リサーチのストラテジスト、ビラジ・パテル氏は「FRB当局者が召喚状を受け取ったとの報道は『米国売り』を再燃させる可能性があるものの、投資家のポジション動向を踏まえると、米国資産に重大な悪影響が及ぶハードルは高いという感触だ」と指摘。その前のポジション状況がドルのショートにかなり傾いていたことを忘れるべきではないと述べた。

  キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジョナス・ゴルターマン氏はドルが今後数営業日に下落したとしても、それが大きなトレンドに発展するとは限らないと指摘する。FRBの独立性を巡る直近の脅威にもかかわらず、ドルに関して前向きになる理由はまだ多いと話した。

  みずほ銀行のシニアストラテジスト、中島將行氏は日本の政治情勢を背景に、市場の不透明感が高まるとリポートで指摘。「13日以降、日本の長期金利に上昇圧力がかかりやすくなる。日本国債市場では売り基調が優勢になる可能性が高い」とし、「全体として、解散の可能性を巡る報道は短期的に、『株高・円安・金利上昇』の組み合わせを強めるカタリストとして作用する公算が大きい」と続けた。

  金融アドバイザリー企業デビア・グループのナイジェル・グリーン最高経営責任者(CEO)は、世界の基軸通貨としてのドルの地位は制度への信認にかかっているとリポートで指摘。「政治指導者による中央銀行支配を許した国は、重い経済的代償を払うことを、歴史が示している」と記した。

  UBSインベストメント・バンクのチーフストラテジスト、バーヌ・バウェジャ氏は、FRBを巡る懸念でドル安圧力がかかる可能性は高いと指摘。一方で、株式ボラティリティーと米長期金利は押し上げられるとみている。

  「市場がFRBの独立性を懸念するにはタイミングが悪い」とし、関税による物価押し上げに伴い、米国のインフレは今後数カ月に上昇する公算が大きいと付け加えた。その上で、「今年の共通テーマとして浮かび上がっているのは、ドル安だけでなく、株式ボラティリティーの上昇だ」と述べた。

  バウェジャ氏は13日公表の12月米CPIについて、コアCPIが「強い」内容になると見込んでいる。

国債

  米国債は長期債を中心に下落。10年債利回りは朝方に一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.83%2.20.47%
米10年債利回り4.18%1.80.43%
米2年債利回り3.54%0.40.12%
米東部時間16時38分

  マッコーリー・グループのティエリー・ウィズマン氏は「FRB政策に影響を及ぼそうとするホワイトハウスの最新の試みは、成功するかどうかが、市場への中長期的な意味合いという点では重要だ」と指摘。「成功すれば、他の条件が同じ場合、ドル安、イールドカーブのスティープ化、長期金利の上昇、インフレ期待(ブレークイーブン)の上昇が、最も起こりやすい結果だと予想する」と述べた。

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は、債券市場の値動きは今のところ、FRBの信認を巡る懸念と整合的で、イールドカーブはスティープ化していると指摘。ただし、動き自体はこれまでのレンジ内にとどまっていると付け加えた。

  ドイツ銀行のマクロストラテジスト、ティム・ベイカー氏は「FRBに対する一段の利下げ要求圧力だとして市場は警戒しているが、追加緩和は行き過ぎだともみている」と指摘。「長期金利は上昇しており、住宅ローン金利はむしろ上がる方向だ」と話した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3営業日続伸し、昨年12月初旬以来の高値となった。石油輸出機構(OPEC)第4位の産油国イランで抗議活動が拡大し、同国からの供給に支障が生じるとの見方が強まっている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、トランプ大統領がイランに対する新たな攻撃に傾いていると報じた。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は8、9両日に計5%余り上昇していた。トランプ氏は核開発プログラムを巡り、イランが米国との交渉開始を提案してきたと述べた。一方で、デモ隊に対するイラン政府の対応を理由に、同国に対する軍事攻撃を承認する方向に傾いていると、WSJは事情に詳しい米当局者の話として伝えた。

  イランで政治・軍事的な混乱が新たに起きれば、日量約330万バレルの原油生産に支障が生じる恐れがある。

  TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダン・ガリ氏は「トレーダーは今、体制移行が円滑に進む可能性と、混乱した体制移行となり原油生産・輸出に影響が及ぶ可能性、軍事衝突や誤算が生じる可能性、さらには体制移行後に米国主導の条件で合意に傾く可能性を見極める必要がある。米主導の条件で合意に向かった場合、エネルギー市場には最もネガティブな影響が及ぶ」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は、前営業日比38セント(0.6%)高の1バレル=59.50ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は53セント(0.8%)上昇の63.87ドル。

  金と銀は上昇し、共に最高値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)が刑事訴追される可能性が浮上したことから、FRBの独立性を巡る懸念が再燃し、金属相場全体が上昇している。

  金は1オンス=4600ドルを超え、銀も85ドルを上回った。パウエルFRB議長は司法省の動きについて、金利決定に影響を与えようとする「政権による脅しや継続的な圧力」の中で生じていると指摘した。

  トランプ政権によるFRBへの度重なる圧力行使は、昨年における金と銀の高値更新の主因であり、今後も続くとみられる。FRBのインフレ抑制能力が弱まれば、ドルや米国債の重しとなり、価値保存手段としての貴金属の魅力が一段と際立つ。

  ジュリアス・ベア・グループのカルステン・メンケ氏は「FRBへの介入強化は、2026年の貴金属市場にとって強気材料となる重要な不確定要素だ」と指摘。市場規模が相対的に小さい銀は、金利やドルの動きに敏感なため、「こうした懸念への反応が強くなる可能性が高い」と述べた。

FRBに対する新たな攻撃を受けて金は買われる

  貴金属相場は米金利低下や地政学的緊張の高まり、米国がインフレ抑制への取り組みを緩めるとの見方など、複数の追い風に押し上げられている。十数人の運用担当者は、金の長期的な魅力に確信を持っており、利益確定を急いでいないと語った。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時43分現在、105.47ドル(2.3%)高の1オンス=4614.97ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は、113.80ドル(2.5%)上昇の4614.70ドルで引けた。

原題:Wall Street Stages Cautious Bounce Amid Fed Angst: Markets Wrap(抜粋)

Wall Street Stages Cautious Bounce Amid Fed Angst: Markets Wrap

Dollar Falls on DOJ’s Fed Subpoenas; Swissy Up: Inside G-10

Dollar Drops Most in Three Weeks as Fed Gets Subpoenas (1)

UBS Sees Fed Jitters Driving Dollar Lower, Equity Swings Wider

Oil Hits One-Month High as Iran Protests Offer Fresh Supply Risk

Gold and Silver Storm to Records as Fed Hit With DOJ Subpoenas