当選証書を受け取る小川氏(13日、前橋市役所で)

 12日に投開票が行われた出直しの前橋市長選は、既婚の男性職員とホテルに複数回行っていた問題で辞職した小川晶氏(43)の再選で幕を閉じた。全国から注目され、批判も寄せられたが、市民は小川氏を信任した。なぜ勝利できたのか。選挙戦を振り返る。

当選証書を受け取る小川氏(13日、前橋市役所で)

「今まで以上にしっかりと働きたい」

 13日の午後4時前、当選証書付与式の会場となった市役所11階の会議室に、小川氏は神妙な面持ちで現れた。当選証書を手渡された際は軽い笑みを見せたが、その後のあいさつでは「厳しいお声をたくさんいただいた。今まで以上にしっかりと働きたい」と再び表情を引き締めていた。

 自身の不祥事を受けて行われた市長選だったが、ふたを開けてみれば、最大のライバルと目された丸山彬氏(40)に1万票差をつける圧勝。投票率が上がった影響もあるが、初当選した2年前を2407票上回った。こうした背景には、小川氏陣営の綿密な戦略があった。

 問題判明後、小川氏は記者会見や議会への説明で謝罪したものの、早々に続投に意欲を見せた。この対応を議会側は疑問視。群馬県の山本知事が記者会見や自身のブログで厳しく批判したほか、経済界の反発もあり、市議会は不信任決議案の提出方針を決めた。失職の可能性が高まる中、小川氏は辞職を選んだ。

 「おわび行脚」は辞職前から行っていた。出直し選出馬を見越しての行動ではなかったが、結果的に選挙戦に大きな影響を与えた。

 「旧町村部の、特に女性からの拒否反応があった」との情報を共有した陣営は、告示日の遊説先にあえて郊外を選択。翌日も郊外を中心に駆け回った。支援者は演説やSNSで、知事らの批判を「行き過ぎたバッシング」などと訴えた。

 その効果は、すぐに表れた。告示から数日後の集会では、演説に大きな拍手と「がんばれ!」のエールが送られた。「もう許そうよ、という雰囲気が出てきた」。陣営幹部の一人は、その兆しを肌で感じていた。

自民支持層の4割近くが小川氏支持

 読売新聞が12日に行った出口調査では、小川氏は無党派の5割強の支持を得た。自民党の国会議員や県議、保守系市議が丸山氏を支援した中でも、自民党支持層の4割近くが小川氏を支持。ホテル問題の内容から、陣営は女性の支持離れを懸念していたが、女性の支持でも丸山氏を上回った。

 知事のブログでの批判も、丸山氏陣営から「同情票が流れた」と指摘する声が出るなど、小川氏を利する側面もあった。

 山本知事は13日の定例記者会見で「全て正論を展開した」と強調しつつ、「市民の大多数が思っている感覚をすくい取れていなかった面は、率直に反省しなければいけない」と語った。

 一方、有権者の信任を得た小川氏だが、市議会との関係改善は課題として残る。

 小川氏は13日、「ご意見を尊重した出直し選挙だった。しっかりと上がってきたため、また連携していけると思う」と述べた。ただ、丸山氏を支援した富田公隆議長は「市民の負託を重く受けとめたい」としつつ、「健全な市政運営、また市政の発展のためにご尽力いただければと思う」と述べるにとどめた。