▽トランプ氏、グリーンランド取得で武力行使を否定 ダボス演説<ロイター日本語版>2026年1月22日午前 12:59 GMT+9

トランプ氏、グリーンランド取得へ「武力行使わず」 ダボス演説

[ダボス(スイス)21 日 ロイター] – トランプ米大統領は21日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で演説し、デンマーク自治領グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明した。同時に、戦略的要衝であるグリーンランドを守ることができるのは米国のみと主張し、即時の交渉を求めた。

トランプ大統領は「私が武力を行使すると考えられていたようだが、武力を行使する必要はない」とし、「武力は使いたくないし、使わない」と強調した。その上で「米国以外にグリーンランドの安全を確保できる国はない」とし、「米国によるグリーンランド取得について再協議するため、即時交渉を求める」とした。

米国が第2次世界大戦中にグリーンランドを救い、戦後にデンマークに返還したものの、無防備のまま放置されているとし、デンマークを「恩知らずだ」と批判。さらに、米国のグリーンランド取得は「小さな要求」にすぎず、「北大西洋条約機構(NATO)への脅威ではなく、安全保障の強化につながる」と主張した。「米国はNATOから何も得られていない」という不満も改めて示した。

欧州については「好きだが、正しい方向に向かっていない」とし、環境、移民、地政学問題など幅広い分野で政策の誤りがあるほか、誠実さに欠けると非難した。

演説は1時間以上に及び、グリーンランドをアイスランドと言い間違える場面もあった。

トランプ氏はその後行われたダボス会議の対談イベントで、グリーンランドを国家および国際的な安全保障のために利用する重要性を改めて強調。ただ、デンマークとどのような合意を目指すかという質問に対しては「どうなるか見てみよう」と述べるにとどめ、明言を避けた。

▽グリーンランドの将来巡る合意枠組みに到達、対欧関税保留-米大統領<bloomberg日本語版>2026年1月22日 at 4:41 JST

  • NATO事務総長と会談後に投稿、枠組みの具体的な内容は示さず
  • 米国はグリーンランドの鉱物権益に「関与」へ-トランプ氏
トランプ米大統領は、グリーンランドを巡り将来のディール枠組みに達したと述べた
トランプ米大統領は、グリーンランドを巡り将来のディール枠組みに達したと述べたPhotographer: Juliette Pavy/Bloomberg

Hadriana LowenkronJennifer A Dlouhy

トランプ米大統領は21日、グリーンランドを巡り「将来の合意の枠組み」に達したと主張し、米国による取得の取り組みに反対する欧州諸国に対して2月1日から予定していた関税の発動を見送る考えを示した。

  ソーシャルメディアで明らかにした関税の発動見送りは、ここ数日、欧州に圧力をかけ続けてきた大統領にとって大きな方針転換となる。世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に合わせ、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談した後に示された。

  ただトランプ氏は、「枠組み」の具体的な内容については説明していない。デンマークはこの日、自治領グリーンランドを米国に譲渡する交渉には応じないと表明しており、合意の枠組みが何を意味するのかは不明だ。

  トランプ氏は投稿で、「グリーンランド、そして実際には北極圏全体に関して、将来の合意の枠組みを形成した」と述べた。さらに、「この解決策が成立すれば、米国とNATO加盟国すべてにとって素晴らしいものになる」とし、「この理解に基づき、2月1日に発効する予定だった関税は課さない」と続けた。

  トランプ氏のコメントを受け、米国株は急伸、ブルームバーグ・ドル指数は日中高値を付けた。米国債も上げ幅を拡大した。

関連:トランプ氏、グリーンランド取得へ武力行使せず-譲渡求め欧州に圧力

  トランプ氏は投稿後、記者団に対し、合意の詳細を近く公表すると述べた。米国がグリーンランドの所有権を得る内容かどうかを問われると回答を避け、「長期的なディールだ。究極の長期ディールで、全員が非常に良い立場になると思う」と語った。期間については「無期限」になるとした。

  また、CNBCのインタビューでトランプ氏は、グリーンランドを巡る自身の「計画の構想」についてデンマーク当局者と直接話したことはないものの、ルッテ氏が現地で首脳らに説明したと推測していると述べた。さらに、米国がグリーンランドの鉱物資源の権益に「関与する」ことになるとも語ったが、詳細は明らかにしなかった。

  トランプ氏は投稿で、ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」を巡り、今後も追加協議が行われると述べた。交渉はバンス副大統領やルビオ国務長官、ウィトコフ特使らが担当するとした。トランプ氏はグリーンランド取得を目指す理由の一つに同防衛構想を挙げていた。

  トランプ氏は17日、米国によるグリーンランド取得に反対し、デンマークを支持する欧州8カ国に対し、2月1日から10%の関税を課し、6月1日までに合意が成立しなければ税率を25%に引き上げると述べていた。

関連記事:トランプ氏、NATO加盟8カ国を関税で脅し-グリーンランド領有強硬手段

原題:Trump Backs Off Greenland Tariffs, Citing ‘Framework’ Deal (1)
Trump Holding Off on Greenland Tariffs, Citing ‘Framework’ Deal(抜粋)

▽グリーンランド問題、欧州に米国と対決する覚悟はない<ロイター日本語版>2026年1月21日 at 9:36 JST

Marc Champion, コラムニスト

トランプ大統領が話を終えた記者会見場(1月20日)
トランプ大統領が話を終えた記者会見場(1月20日)Photographer: Al Drago/Bloomberg

Marc Champion

国外在住の米国民として筆者は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中でも特に忠実な同盟国であるデンマークを威圧し、グリーンランド引き渡しを迫るトランプ米大統領の露骨な試みに対し、欧州が抱く怒りに共感する。

  米国がこの姿勢を変えないのであれば、欧州の人々には米国からの輸入品やソーシャルメディアのプラットフォーム、さらにはサッカーの2026年ワールドカップ(W杯)さえもボイコットするよう勧めたい。

  ただし、一部の指導者が、欧州連合(EU)のいわゆるバズーカ砲と呼ばれる対抗措置「反威圧措置」(ACI)を用いて、米国との全面的な貿易戦争に踏み出すべきだと主張していることについては、引き金を引く前に、その結果を冷静に見極める必要があると考えている。たとえ、そうした集団的な行動が、どれほど原則に忠実で、正当性があり、感情的な解放感を伴うものであってもだ。

  こうした強硬論の背景にある考え方自体は妥当だ。欧州はもはや限界に達している。トランプ氏を融和し、お世辞を並べることで関係維持に努めてきたが、その試みは失敗した。

  結果として、米国の最も親密な同盟諸国は弱いとのトランプ氏の認識を裏付けることになり、さらに拍車をかけてしまった。なぜなら、トランプ氏が欧州を「押し切れる」と感じているからだ。

  本来であれば、トランプ氏の主張には合理性がほとんどなく、同氏に方針転換を促すことは可能なはずだ。トランプ氏が掲げる「米国の安全保障」を確保するためにグリーンランドが「絶対に必要」な理由は存在しない。

  結局のところ、トランプ氏はグリーンランドが欲しいのだ。その理由はそれほど重要ではない。同氏が領有に固執する限り、この広大な氷に覆われたグリーンランドの行方は、原則ではなく力によって決まる。そして、そこではトランプ氏が常に優位だ。

  EUは貿易分野では米国と互角に渡り合えるかもしれないが、トランプ氏は通商と安全保障を区別せず、いずれも交渉のレバレッジとして扱う。ベッセント米財務長官が18日に示したように、欧州は米国の軍事力に過度に依存しており、NATOとウクライナの両方を失うようなリスクを取ることはできず、欧州は引き下がると、米国はみている。

  ポーランドやバルト3国は、グリーンランド問題を巡って米国による安全保障の傘を危険にさらす覚悟が本当にあるのだろうか。領土主権は彼らが重視する原則だが、あくまで原則に過ぎない。

  一方、ロシアから守ってもらうという米国の保護を失う脅威は、存亡に関わる問題だ。情報共有や、ウクライナへのパトリオット防空ミサイルの売却を撤回する口実をトランプ氏に与えるリスクを、ポーランドやバルト3国、そして欧州諸国の大半が本当に取るだろうか。同様に、トランプ氏が関税を課すと警告した欧州8カ国に含まれていないイタリアが、対米貿易戦争の開始を支持するだろうか。

  将校1人をグリーンランドに派遣した英国も、関税を課すと脅された国の一つとなった。常に融和的とされるスターマー首相は、この対応を「完全に間違っている」と批判した。しかし、すでに苦境に立つ同首相が、米国との貿易戦争によって輸出や対内投資が打撃を受けるリスクを取るだろうか。

  さらに重要なのは、米英の諜報(ちょうほう)機関の緊密な関係、そして英国のトライデント核抑止力でさえ米国製ミサイルに依存しているほど、両国の防衛体制が深く結び付いている点だ。スターマー氏は19日の記者会見で、あらゆる立場に配慮したが、答えはほぼ明確な「ノー」だった。同氏は現実的な対応の必要性を訴えた。

  その現実主義はおそらく、トランプ氏ではなく、英国と欧州が主導して示さなければならない。欧米関係のあらゆる分野に波及する貿易戦争に勝てるほど、欧州勢は強くない。仮に試みたとしても、通商のバズーカ砲を撃つべきかどうかで足並みが乱れ、最初の関門でつまずく可能性が高い。

  欧州にとって最大の望みは、自己顕示欲に基づく計画のためにNATOを犠牲にしようとするトランプ氏に対し、共和党内から反発が起こり、同氏に撤回を迫ることだろう。

  トランプ氏にとってグリーンランドを領有するということは同氏の敬愛するマッキンリー大統領が1898年にハワイを併合して以来の領土獲得を成し遂げた米国の大統領になれるということだ。これも魅力的に映っているのだろう。

  もし、このグリーンランド論争が利己的な自己愛のようなくだらない動機によるものではないと思っているなら、トランプ氏がノルウェーのストーレ首相に送ったとされるテキストメッセージを読めばよい。そこでは、グリーンランド買収の提案が、オスロに拠点を置くノーベル委員会が自身に平和賞を授与しなかったことと結び付けられている。

  二つの世界大戦以前、他国から領土を購入したり奪取したりすることは一般的だった。デンマークでさえ、1917年にカリブ海の植民地(現在の米領バージン諸島)を売却している。その後、こうした行為が大きく減ったのは、冷戦と米国の支配的地位があったからだ。だが、悲しいことに、その国際秩序を支えてきた米国自身がそれを壊そうとする中で、欧州にはその枠組みを維持し続けるだけの力はない。

(マーク・チャンピオン氏は、欧州・ロシア・中東を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。以前はウォールストリート・ジャーナルのイスタンブール支局長を務めていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Europe Can’t Afford a Throwdown Over Greenland: Marc Champion(抜粋)