• 米国は「実質的に完全なアクセス」、対欧州関税を撤回へ
  • ルッテNATO事務総長「主権には踏み込まず」、合意はなお概要段階
グリーンランドの首都ヌーク沿岸の住宅街
グリーンランドの首都ヌーク沿岸の住宅街Photographer: Carsten Snejbjerg/Bloomberg

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トランプ米大統領がグリーンランドを巡る緊張の高まりを和らげる決断を下すきっかけとなった合意により、北極圏での北大西洋条約機構(NATO)の安全保障体制が強化され、ロシアや中国からの脅威に対抗する道が開かれた。

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  トランプ大統領がスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、NATOのルッテ事務総長と21日夜に会談した後に言及した「枠組み」には、米国のミサイル配備や中国の関与を排除するための鉱山採掘権、そしてNATOのプレゼンス強化が盛り込まれている。協議内容に詳しい欧州当局者が明らかにした。

  この協定は、欧州諸国に対して関税を課さないとの米大統領の約束が守られることも前提となっており、第2次世界大戦後にNATOが創設されて以来、最も深刻な対立の危機を和らげるものとなっている。

  ルッテ事務総長はダボスでのブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「北極の防衛、とりわけグリーンランドを優先する場合、われわれはもっとエネルギーと時間、そして関心を注がなければならない。なぜなら、シーレーン(海上交通路)が開かれつつあるからだ」と語った。

  主権の問題は協議の議題には挙がらなかった。NATOの同盟国であるデンマークの自治領グリーンランドに対し、トランプ氏が繰り返し強引な主張を行い、ここ数週間、欧州首脳の間で懸念が高まっていたことを踏まえれば、今回の合意は大きな進展といえる。

  ルッテ氏は「そのような詳細にはまったく踏み込まなかった」と述べた。米軍のプレゼンス拡大についても協議されなかったが、同氏によると、デンマーク政府はその可能性に対して全面的にオープンな姿勢を示しているという。

  トランプ大統領は最終的な合意に強い期待を示しているものの、今回まとまったものは最終合意に盛り込むべき事項の「概要」にとどまっており、実現には今後も多くの課題が残されている。

グリーンランド「合意枠組み」の概要:
・1951年の協定を改定し、米軍基地の要件を保障
・北極圏および極北地域の安全保障におけるNATOの役割を強化。グリーンランドには米国指揮下で多国籍のNATO司令部を設置
・鉱山採掘権などを含む経済面の合意は今後協議
・ロシアおよび中国によるグリーンランドでの経済的・軍事的関与を阻止する措置米
・国は欧州への関税発動の脅しを撤回

  デンマークのフレデリクセン首相は自国メディアのインタビューで、NATOのルッテ事務総長にはデンマークを代表して交渉する権限はなく、米国への領土譲渡については交渉の余地がないとの自身の立場を改めて強調した。

  フレデリクセン氏はデンマーク放送協会(DR)とTV2に「国際法と主権を尊重する道を見つける必要がある」と語った。

  北極圏の安全保障やグリーンランド防衛といった主要な論点を除けば、この「枠組み」の具体的な形式や、どの程度まで合意が成立したのかは依然として明らかになっていない。

「欲しいものはすべて」

  ダボスで議論された内容の一部は、すでにこれまでの協議の中で提示されていた。事情に詳しい関係者によると、一部は先週ワシントンで行われた協議と重なる内容で、そこではデンマーク代表団がバンス副大統領やルビオ国務長官と面会し、米国の安全保障上の懸念に対応するための作業部会の設置が含まれていた。

  欧州のNATO加盟国も北極圏およびグリーンランドに焦点を当てたNATO主導の活動を提案していた。関係者によれば、今回の合意には1951年の協定を刷新する項目も含まれており、これにより米軍はNATOの枠組みの中でグリーンランド防衛の広範な権限を引き続き有することになるという。

  トランプ大統領はFOXビジネスとのインタビューで、協定の条件については現在も交渉中だとしつつ、「実質的には完全なアクセスだ」と発言。「期限も制限もない。われわれは欲しいものをすべて、代償なしで手に入れていく」と語った。

  米国が最終的にグリーンランドを取得する可能性があるかとの質問には、「あり得るが、今のところ、望んでいたものすべて、完全な安全保障を手に入れている」と述べた。

Greenland Calls on NATO to Ensure Defense Amid US Threats
グリーンランド・イルリサットで住民がハスキー犬に餌を与える様子(2026年1月12日)Source: Hors Format

  氷に覆われたこの領土は世界最大の島であり、北極圏におけるNATOの利益にとって極めて重要な存在となっている。氷の融解により北方のシーレーンが開かれ、敵対勢力が大西洋へ直接進出する可能性が出てきたためだ。トランプ大統領は、自身の領有権主張を米国の防衛手段の一環として位置づけており、その戦略的視点はNATO首脳も繰り返し強調している。

  米大統領の強硬な発言は、グリーンランドの住民自身に最も強く影響しており、不安をあおるとともに、米国への反発を一層強めている。グリーンランドのニールセン首相は今週、可能性は低いとしながらも、軍事侵攻に備えるよう住民に呼びかけた。

  あるデンマークの有力議員は、こうした反発が、グリーンランド自治政府に対し米軍の駐留拡大を受け入れさせようとするデンマーク政府の取り組みを一段と困難なものにしかねないと述べた。

原題:Trump’s NATO Deal Would Mean US Mining and Missiles in Greenland(抜粋)