藤原健作、重松浩一郎
[スキャナー]
事実上の選挙戦に入った衆院選(27日公示、2月8日投開票)で、自民党は高市内閣の高い支持率を最大限活用し、高市首相(党総裁)の「信任投票」に持ち込む展開を狙う。「大義なき解散」との批判を強める中道改革連合は、支持団体の連合と創価学会の組織票を土台に対抗する構えだ。(政治部 藤原健作、重松浩一郎)
自民「信任投票」狙う
「真冬の選挙だ。体に気をつけて絶対に勝ち抜いてきてください」自民、中道改革両党首の発言と両党の強み・弱み
衆院が解散され、議場を出る前議員ら(23日、国会で)=松本祐典撮影
首相は23日、自民党両院議員総会で、直後の解散で議員の身分を失う衆院議員らを激励した。その後、党本部で公認候補予定者一人ひとりに公認証を手渡し、「必勝!」と声を掛けた。
衆院選で、自民が最大の武器とするのが首相への支持率の高さだ。読売新聞の全国世論調査では昨年10月の就任以降、内閣支持率は70%超を保ち、特に、自民離れの傾向がみられた若年層からの支持が厚い。
自民内では「無党派層や保守層の取り込みにつながる」との期待が広がる。そのため、党は首相の露出を増やすことを基本戦術に据える。政権公約の冊子は文字を減らし、首相の写真を多用し、ほぼ写真だけのページも作った。解散後初の週末は、首相がテレビ番組をはしごする計画だ。党幹部は「首相の人気をどこまで候補者の得票に結びつけられるかが勝負の分かれ目になる」と分析する。
立候補予定者側でも「高市人気に思い切り乗る」との声が広がる。首相への応援依頼も殺到する。ある候補は、首相の写真を合成し、自らと首相が並ぶ構図のビラを作成し、閣僚の一人は「首相が目立つ公約冊子を幅広く配る」と意気込む。
首相も解散の意向を表明した19日の記者会見で「高市早苗が首相でよいかどうか、国民に決めていただく」と強調した。野党が主張することが多い「政権選択選挙」との言葉を持ち出し、「自民と維新で過半数の議席なら高市首相。そうでなければ野田首相か斉藤首相か」とまで言及した。
自民と連立を組む日本維新の会も「党首の顔」に期待するのは同様だ。吉村代表(前大阪府知事)は衆院選と同日選となる大阪府知事選に出馬して選挙活動に入っており、党幹部は「衆院選と相乗効果がある」と見込む。
自民の懸念材料は、党の支持率が回復していないことだ。昨年12月の読売新聞の全国世論調査では30%だった。自民が惨敗した2024年衆院選前の10月調査時の38%を下回る。前回衆院選の逆風の要因となった派閥の政治資金規正法違反事件に関し、「批判は下火にはなったが厳しい意見は今もある」(首相周辺)と影響を危惧する向きもある。
今回は各小選挙区で1万~2万票とされる公明票を当てにできず、久々の「地力」の戦いとなることも、自民の不安材料だ。閣僚経験者は「公明支持者が日に日に離れていく実感がある」と焦りを募らす。党中堅は「首相による追い風効果と公明票のマイナスのどちらが大きくなるか。本当に読めない」と漏らした。
中道「大義なき解散」と批判
中道改革連合の野田共同代表は23日の党会合で「本当にこのタイミングで解散していいのか、いまだに疑問だ」と訴え、首相の判断に矛先を向けた。笠浩史共同国会対策委員長も「国民生活より党利党略を優先する政権の姿勢は絶対に許せない」と強調する。通常国会冒頭での解散により、2026年度予算案の年度内成立は困難になった上、真冬の選挙戦で大雪の影響を懸念する声もある。中道改革はこうした問題点に照準を合わせ、「『自分ファースト』対『生活者ファースト』の競い合いだ」(野田氏)との主張を浸透させたい考えだ。
「解散の大義」をことさらに疑問視するのは、与党と差別化する目玉政策を打ち出せていない焦りの裏返しとも言えそうだ。
中道改革を結成した立憲民主党と公明党は、政策のすり合わせに際し、安全保障やエネルギー政策、憲法改正に多くの時間を割き、他の政策の検討時間は限られた。解散当日に公表がずれ込んだ公約では、食料品の消費税率ゼロや、減税と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入といったメニューを並べたが、いずれも自民公約に盛り込まれた。
消費税減税を巡っては、中道改革の公約では、恒久措置とし、今年秋からの開始と明記した。減収分を穴埋めする財源確保の方策として、政府系ファンドの創設も盛り込んだが、党内からは「短期決戦でこうした差異をどこまでアピールできるのかわからない」との見方も出ている。
新党結成による浮揚効果が見通せない中、中道改革が頼るのが、立民を支援する連合と、公明の支持母体・創価学会を中心とする公明票だ。いずれも、全国の小選挙区と比例選で一定の目算が立つ組織票で、選挙基盤が弱い立民出身議員からの期待は大きい。
中道改革幹部は「二つの組織票に政権批判票を上積みする」との戦略を描く。ただ、立民と公明の融和を優先し、主要幹部にいずれも両党出身者が並ぶ「共同制」をとるなどし、刷新感は薄れた。首相指名選挙での党内候補も明確になっていない。浮動票の取り込みには、新党名の知名度不足も克服する必要があり、立民出身のベテランは「公明票が来るのは心強いが、手探りの戦いになる」と語った。


