ロイターが今朝配信した記事によると、「米軍が中東地域に原子力空母『エイブラハム・リンカーン』や複数の駆逐艦を派遣する中、トランプ大統領はこの日の閣議でヘグセス氏に現状について報告するよう要請。ヘグセス氏は『イランは核開発を追求するべきではない。大統領が期待するあらゆる任務を遂行する準備があると述べた』」とある。

イラン国内の混乱に乗じてトランプ氏はこのところ、「核協議に応じなければ次の攻撃は甚大なものになる」と脅しをかけている。一般市民を無差別に殺害するイランの統治システムがいいとはまったく思わない。同国を支配する最高指導者ハメネイ師はすでに国家の統治能力を失っている。トランプ氏はデモ参加者を救済すべく、もっと早く介入すべきではなかったのか。そんな思いも頭の片隅に残っている。

だからだろう、中東に向かった米軍の大艦隊のニュースを見ながら、「なんでいまごろ」、自問が頭の中を駆け巡る。でも答えなどあるはずもない。考えるのはトランプ大統領が何を目指しているのか、ノーベル賞かMAGAか」。思い浮かぶのはその程度のこと。それでも答えを探す努力は必要だろう。最近のトランプ氏の行動や言動を思い浮かぶまま振り返ってみた。

まずはベネズエラだ。1月3日未明にトランプ氏は、強力な軍事力を使ってベネズエラに侵攻した。反トランプの強硬派であるマドゥロー大統領は一夜にして拘束、米国に連行され裁判を受ける身となった。世界中が突然の出来事に身をすくめた。米国の恐ろしさを改めて知った瞬間でもある。

これを機に「ドンロー主義」が脚光を浴びた。説明すべくもないだろう。19世紀前半欧州の台頭に対抗すべく当時のモンロー大統領が採用した「モンロー主義」(孤立か政策)と、ドナルド・トランプ大統領の頭文字をとって合成した新語だ。狙いは簡単、グリーンランドを占有して西半球を軍事的に支配するというものだ。ゴールデン・ドーム構想に関連した西半球支配の大戦略である。

背景にあるのはもちろんAmerica FirstとMAGA(Make America Great Again)だ。ベネズエラへの軍事侵攻も、カナダを52番目の州にするとの発言も、ドンロー主義をベースに考えれば、実現性はともかくトランプの戦略としては理解できる。ちなみに東半球に属している日本は、アメリカの53番目の州になることはないのかもしれない。それはともかく、ここまではある意味で筋らしきものがある。

ところが、例えばイラン問題。トランプ氏の戦略や筋がわからなくなる。America Firstを追求するなら、どうしてイランへの軍事介入という発想が出てくるのだろうか。America Firstは本来、他国の紛争から米国が手を引くことを目指していたのではないのか。そのためにトランプ関税を賦課して貿易収支を改善し、経常収支の黒字化を目指す。財政赤字を解消してグリーンランドに防衛基地の最前線を構築する予算を自前で調達する、そんな思惑が隠されていたのではないか。

イランは東半球に所属する。東半球はNATO中心に自分たちで紛争解決しろ。それが良いか悪かは別にして、そんなメッセージが「ドンロー主義」に込められていた気がする。ところがイラン情勢が緊迫化すると、途端に手のひらを返したように「デモ隊よ頑張れ、応援がすでに向かっている」とか、「ハメネイは今の地位にとどまるべきではない」と強行姿勢に転じる。挙げ句の果てが本格的な軍事侵攻の構えだ。

トランプ氏の戦略がAmerica Firstではなく、西側Firstならこの考え方も理解できる。でもそうなればグリーンランドは米国の占有ではなく、西側陣営が共有して強権国家群に備えなければならなくなる。そうなるとNATOやEU、中国や北朝鮮、日本も含めて戦略の大転換が必要になる。トランプ関税も見直さざるを得なくなる。

でも大丈夫。トランプ氏はTACO(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつも尻込みする)なのだ。脅すだけかもしれない。戦略の大転換など必要ない。TACOを通せばいいだけかも。結果がどうなるか「みてみよう」。ただそれだけ。だが、本当にそうなのか。個人的には別の懸念が大きくなっている。

米政治専門メディア「ポリティコ」が28日、次の記事を配信した。「スロバキアのフィツォ首相が22日に開かれたブリュッセルでの複数の欧州首脳との非公式会談で、同氏が直前に面会したトランプ米大統領の精神状態について、懸念する内容の発言をしたと報じた。フィツォ氏と会談した欧州首脳から説明を受けた複数の欧州外交官が匿名を条件にポリティコに証言した」。

スロバキアのフィツォ首相はハンガリーのオルバーン首相とともに親トランプで知られた人物だ。その人の証言は間接証言ではあるが、信憑性は高い気がする。トランプ氏は兼ねてから認知症の疑いが報じられている。認知症が悪化すると攻撃的になるというのが通説だ。

最近のトランプ氏の行動は認知症の進行が原因かもしれない。そう考えると戦略的な矛盾やAmerica FirstにMAGA、TACOが世界を掻き乱している原因が理解しやすい。