• S&P500種一時1.5%安、AI投資への懐疑論が重し-景気敏感株に買い
  • 米金利は低下、株安や貴金属の下落で逃避買い-原油3日続伸
ニューヨークのナスダックマーケッツ
ニューヨークのナスダックマーケッツSource: Bloomberg

Rita Nazareth

29日の米国株市場はS&P500種株価指数が小幅安。人工知能(AI)への巨額投資が資本に見合う成果を生むのかとの懸念から、一時大きく下げていたが、終盤にかけて押し目買いが入った。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6969.01-9.02-0.13%
ダウ工業株30種平均49071.5655.960.11%
ナスダック総合指数23685.12-172.33-0.72%

  S&P500種は一時1.5%安となる場面もあったが、景気敏感株の上昇で下落分をほぼ取り戻した。メタ・プラットフォームズは10%高。決算で堅調な見通しを示し、支出計画への懸念が和らいだ。一方でマイクロソフトは10%下落と、2020年以来最大の下げとなった。AI投資の回収に時間がかかるとの懸念が広がった。

  ナベリエ・アンド・アソシエーツのルイス・ナベリエ氏は、「これは典型的な買い場のように見える」と指摘。「主要指数はいずれも底値から反発している。ボラティリティーは明らかに高まっているが、それでもトレンド自体は依然として前向きだ」と語った。

  ウォール街ではAI関連プロジェクトの資金調達に向けた社債発行の急増が見込まれており、2月の発行額は過去最高に達する可能性がある。ただ、過度な楽観に対する警戒感もくすぶり続けている。IBMは好調な決算を受け、ドル建てとユーロ建ての社債を発行する。2026年はテック業界で資金調達が相次ぐとみられている。

  「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大テック企業は、過去3年の大半で株式相場をけん引してきた。しかし2025年末にかけて流れは反転。ウォール街では各社がAI開発に投じている数千億ドル規模の投資や、いつリターンを生むのかに対して懐疑的な見方が強まった。

  フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は「AI主導を前提とした一方向の賭けは、過密状態に見え始めている」と指摘。「AIというテーマが、期待したほど即座に高い利益を生まないのではないかという不安が投資家の間に広がりつつある」と述べた。

  28日には連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の据え置きを決定した。トランプ米大統領は29日、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長の指名候補を「来週」発表すると述べ、次期議長が利下げを行うとの見方を改めて示した。

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、「投資家が売りに出ているのは、半年前に期待していたほどAIテーマの投資で利益を上げられないと気づき始めたからだろう」と分析。「投資家は過熱しているAIトレードの評価を見直しており、ポートフォリオにおける大型テック株の配分調整を進めている」と語った。

  22Vリサーチのデニス・デブシェール氏は「AIというテーマ、そして今後のAI向け設備投資から誰が恩恵を受けるのかという点は、依然としてファクター別や時価総額別の投資判断を左右する最大の要因だ」と指摘。「マクロ環境はリターンの裾野拡大を後押ししているが、リターンを主導してきたのはAI関連のテーマだ」と述べた。

  メタは今年の設備投資を最大1350億ドルに約倍増させる方針で、AIへの全賭けと言える動きだ。テスラは今年、AIや自動運転車、ロボット開発などに200億ドルを投じる計画で、これはウォール街の予想のほぼ2倍に相当する。さらに最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が率いるxAIにも20億ドルを追加投資する。

  一方、マイクロソフトでは支出が過去最高水準に膨らむ中でクラウド事業の売り上げの伸びが鈍化し、AI投資の回収に想定以上の時間がかかるのではないかとの懸念が広がった。

  サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はアナリスト向け電話会議で、オフィスワーカー向け主力AIツールの「M365 Copilot」の有料サブスクリプション契約数が1500万件に達したと説明。同サービスの導入がマイクロソフトの大規模な法人顧客基盤の中で広がっていると付け加えた。

関連記事:マイクロソフト株下落、クラウド成長鈍化-AI向け設備投資急増 (2)

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は、「クラウドでの収入の伸びを通じてAIの収益化を測ることに加え、AI導入による生産性向上の兆候がますます明確になってきている」と指摘。その上で、「過去のあらゆるイノベーションサイクルと同様に、今後はAIを支える側から活用する側へと主役が移っていくとみている。AIを活用して業績を改善できる企業は、財務上の具体的な恩恵を享受するだろう」と語った。

  AIの恩恵を受ける企業は、バリューチェーンの中でも知能やアプリケーションの分野にとどまらず、金融やヘルスケアといった他のセクターにも「広がっていく」可能性が高いと、同氏は指摘。

  「したがって、AIによる技術革新は今後数年にわたって株式リターンを押し上げ続けるという見方をわれわれは維持している。投資家はバリューチェーン全体にわたって投資対象を広げるべきだ」と結論付けた。

国債

  米国債は上昇。米国株の下落に加え、高騰していた貴金属も値下がりする中、安全資産として米国債を買う動きが広がった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.86%0.00.00%
米10年債利回り4.23%-1.2-0.28%
米2年債利回り3.56%-1.6-0.45%
米東部時間16時46分

  短期債中心に利回りが低下。2年債利回りは一時3.54%と、15日以来の低水準を付けた。

  TDセキュリティーズの米国金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「今回の金利低下は、株式相場の下落を受けた安全資産への逃避が背景にあるようだ」と分析。「安全資産としての米国債の地位を疑問視する声も出ていたが、きょうのような本格的なリスクオフ局面では期待を裏切ることはほとんどない」と語った。

  ただ米国債への需要は相対的に抑制されていた。この日実施された7年債入札(発行額440億ドル)では最高落札利回りが4.018%と、応札締め切り直前の4.014%をわずかに上回った。

  ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、スバドラ・ラジャッパ氏によると、過去1週間半にわたるドル安を巡る投資家の不安も、米国債の上昇を抑える要因となった。

  「投資家がリスク資産に対してやや神経質になっており、特にドルやドル建て資産からの資金シフトが進む中で、限定的な質への逃避が起きている」とラジャッパ氏は語った

為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が小幅に下落。米国債の低下に連れ安となった。米国株安や不安定な金属価格がドルの重しとなった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1177.90-1.56-0.13%
ドル/円¥153.11-¥0.30-0.20%
ユーロ/ドル$1.1969$0.00150.13%
米東部時間16時47分

  この日は月末要因による資金フローも意識されたほか、トランプ政権の動向やイランに対する軍事行動の可能性を巡る報道も材料視されている。

  ウェルズ・ファーゴの新興国担当エコノミスト兼為替ストラテジスト、ブレンダン・マッケナ氏は「ドルの下落トレンドは行き過ぎていたように見える」とし、「特に、FOMCが利下げに踏み込む姿勢を明確に示さなかったこともあり、小幅な調整が入る局面だった」と述べた。

  円は対ドルで堅調に推移。ニューヨーク時間にはおおむね、1ドル=152円台後半から153円台半ばで推移した。

原油

  原油先物は3日続伸。トランプ米大統領がイランへの軍事攻撃に踏み切る可能性が意識された。紛争で重要な海上輸送ルートが封鎖されれば、イランからの原油輸出に混乱が生じ、世界市場全体に影響が波及する恐れがある。

  ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル当たり65ドルを上回ったほか、国際指標となる北海ブレントは昨年7月以来となる70ドル台で終了した。

  トランプ氏は前日、「必要とあらば、迅速かつ暴力的に任務を遂行する用意がある」とSNSに投稿。AP通信はこの日、イランがホルムズ海峡での実弾射撃を含む演習を来週実施する計画だとして航行中の船舶に警告を出したと報じた。

  この報道を受けて、ホルムズ海峡が封鎖される可能性を巡る懸念が強まった。同海峡は世界の原油輸送量のおよそ5分の1が通過している。イランの産油量は日量およそ330万バレルで、世界供給の約3%を占める。

  アンソニー・ユエン氏らシティグループのアナリストは、「イランが攻撃を受ける可能性があることから、原油価格の地政学プレミアムがバレル当たり3-4ドルほど押し上げられている」と指摘。「年初時点では大幅な供給過剰が見込まれていたが、原油価格は大方の想定よりも高い水準で推移する可能性がある」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前日比2.21ドル(3.5%)高の1バレル=65.42ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は2.31ドル(3.4%)高の70.71ドル。

  金スポット相場は急落し、昨年10月以来の大幅安となった。アジア時間には1オンス=5500ドルを突破し最高値を更新していたが、リスク回避の動きが強まる中、株式など他資産での損失を補おうと金属の売りが優勢になった。

  ドルの反発を背景に、金スポット価格は一時5.7%安の5106.21ドルをつけた。日中の下げ幅としては昨年10月21日以来の大きさ。ただ、その後は下げ幅を縮小した。銀は一時8.4%下落した。

  ブルー・ライン・フューチャーズのチーフ市場ストラテジスト、フィル・ストライブル氏は「高揚感は頭打ちになったようだ」と指摘した。

  ING銀行のコモディティーストラテジスト、エワ・マンティー氏は、「金は安全逃避先というよりも、流動性を確保する手段として扱われている」と述べた。

  金は今年に入り、地政学的緊張の高まりや米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る懸念を背景に急伸してきた。月初来の上昇率は約20%に達しており、テクニカル指標の一部は短期的な調整を示唆している。

  ジュリアス・ベア・グループのカルステン・メンケ氏は「市場の過熱感に加え、ファンダメンタルズよりも資金フローが相場を左右している状況を踏まえれば、調整が入るのに大きなきっかけは必要ない」と述べた。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時44分現在、前日比100.96ドル(1.9%)安の1オンス=5316.25ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は14.60ドル(0.3%)高の5354.80ドルで引けた。 

原題:Stock Buyers Step In After Tech-Fueled Selloff: Markets Wrap(抜粋)

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