▽「自公協力の象徴」広島3区の構図激変、「斉藤票」獲得に腐心する陣営…自民は悲願の候補擁立も斉藤批判避ける<読売新聞オンライン>2026/01/30 05:00

衆院選2026広島

阿部雄太、岡本与志紀

[26衆院選 現場から]広島3区

「石橋林太郎というタスキをかけたのは今回が初めてだ」

 27日、広島県北部の山あいにある安芸高田市での出陣式。自民党から広島3区に出馬した石橋林太郎(47)は感慨深げに手でタスキを揺らし、「皆さんの力が必要だ」と訴えた。

 衆院議員を2期務めた石橋だが、小選挙区での出馬は初めてだ。3区での出馬を前提に自民県連の公募を通ったものの、2021年と24年の衆院選は比例中国ブロックでの出馬を余儀なくされた。自民、公明両党の連立政権下での調整で3区は「公明枠」となったためだ。

 だが、3区で当選を重ねた前公明代表の斉藤鉄夫(73)が中道改革連合の共同代表に就いたことで、「自公選挙協力の象徴区」と呼ばれた3区の構図は激変した。

 石橋は公示前の選挙対策会議で「必ず小選挙区を取り戻したいという思いを持ってきた。『ついに』との思いだ」と語り、自民県連は議席奪還の好機に一丸となっている。出陣式には、元首相の岸田文雄(68)も駆け付け、支持を呼びかけたが、敵方になった斉藤への批判は避けた。

 岸田と斉藤は中選挙区制だった1993年の旧広島1区で初当選した同期でもある。岸田内閣では斉藤が国土交通相を務め、2人は公明の連立離脱後も連絡を取り合う。岸田は斉藤から新党結成の報告を受け、「立場がそれぞれある。お互い頑張りましょう」と声をかけた。

 斉藤は比例中国ブロックに転じ、前回激突した立憲民主党出身の東克哉(44)を全面支援する。衆院が解散された23日、斉藤は国会内で東との写真撮影に臨み、周囲に「今回から味方になる東さんだ」と紹介した。東は「中道改革と斉藤氏の思いを両方背負って戦っていきたい」と語り、斉藤と一体での勝利を期す。

 衆院広島3区で悲願の自民党候補の擁立にこぎ着けた自民広島県連だが、陣営で楽観論は聞かれない。

 「8万7000から3万引いた5万7000票が今の僕の票かもしれない」

 3区から立候補した自民の石橋林太郎(47)は27日の安芸高田市での出陣式でこう訴えた。石橋が挙げたのは、2024年衆院選で3区を制した前公明党代表の斉藤鉄夫(73)の得票だ。今回、斉藤は中道改革連合の共同代表として、相手陣営を支援する。3万ともされる公明票を見込めない危機感が異例の演説につながった。

 石橋は過去2回の衆院選では比例単独候補として出馬し、「自民」への投票で当選した。3区は党本部の判断で、連立を組む公明の「枠」となっていたためだ。自公連立の解消と新党結成で、石橋はようやく挑戦権を得たが、公明との協力関係は失った。

 公示前の支持者らとの会合では「公明票が自民候補を助けていた図式はなくなった。私は3区で名前を書いてもらったことはない。ゼロだ」と吐露した。

 今回も、ぎりぎりまで党本部の対応に気をもむ日々を送った。連立解消後も公明との関係維持に腐心する自民党本部は、斉藤が3区から出馬すれば、またも自民候補の擁立を見送ることを視野に入れていたためだ。石橋の公認は大半が対象となる第1次に入らず、第2次にずれ込んだ。

 3区の扱いを巡っては、県連重鎮で元首相の岸田文雄(68)も煮え湯を飲まされたことがあった。21年衆院選時の選挙区調整では、当時、岸田派会長だった岸田が公明の擁立方針を受け入れずにいると、公明と支持母体・創価学会側は全国の同派議員を応援しない方針を示し、揺さぶりをかけた。最後は、公明側に押し切られた。

 岸田を含め県連は、中道改革を結成した公明に複雑な思いを抱くが、斉藤への批判は避けている。過去の選挙で築いた公明との絆が今も一定の効果を果たすことへの期待も、攻撃を抑制する。

 一方の中道改革は「党内融和」に懸命になっている。公明党支持層に、中道改革の3区候補となった東克哉(44)の名前を浸透させるのは容易でないためだ。立憲民主党出身の東について、公明県本部代表で県議の栗原俊二(66)は公示直前、「公明党支持者は圧倒的に知らない。どう説明していくのか。まったくゼロからなんで大変だ」と本音を漏らした。

 斉藤は結節役になろうと奔走する。24日には、広島市内のホテルで、立民の支持団体の連合広島会長の大野真人(63)と会い、腹合わせをした。大野が「立憲民主だ、公明だとの名前は出さずにやろう」と提案し、斉藤は同意した。かつて自民との関係構築に腐心した斉藤は、「共闘」には丁寧な調整が不可欠だと熟知しているためだ。

 東も公明側に徹底して歩み寄る構えだ。福祉政策を重点的に掲げてきた東は、公明の主張に沿うように「なぜ(衆院)解散か、政治とカネ、核兵器なき平和な社会を作るの3点を訴えていきたい」と強調する。

 とりわけ、陣営が被爆地・広島で立民と公明を結ぶキーワードと位置付けるのが「平和」だ。平和を守るために新党が役割を果たすと唱える斉藤に呼応し、東は27日の出発式で「広島で非核三原則は絶対だ。平和があるから経済活動ができ、福祉も充実してくる」と力を込めた。

 中央政治に 翻弄ほんろう され続けてきた3区。各陣営は視界不良の中で、不安を抱えたまま戦いに突入している。(敬称略。阿部雄太、広島総局 岡本与志紀)

 2月8日の投開票に向け、各候補が激戦を繰り広げる現場から報告する。