• 米国債は短期ゾーン中心に利回り上昇、年内のFRB利下げ観測後退で
  • 金・銀は下げ縮小、ディベースメント取引巻き戻しでドルほぼ全面高
ISM製造業総合景況指数が予想外に強い内容となり、米主要株価3指数がそろって反発
ISM製造業総合景況指数が予想外に強い内容となり、米主要株価3指数がそろって反発Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

2日の米金融市場では、主要株価3指数がそろって反発。ISM製造業総合景況指数が予想外に強い内容となり、米企業の収益に対する楽観的な見方が広がった。前週末1月30日に急落していた金・銀相場が下げを縮めたことも、株式相場の支援材料となった。ドルと米国債利回りはともに上昇した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6976.4437.410.54%
ダウ工業株30種平均49407.66515.191.05%
ナスダック総合指数23592.11130.290.56%

  ISM製造業総合景況指数は新規受注や生産が着実な伸びに支えられ、2022年以来の高水準となった。過去3年にわたり低迷してきた製造業が回復軌道にあるとの期待が高まった。

  景気敏感株が上昇を主導。S&P500種株価指数は4営業ぶりに反発し、0.5%高で引けた。小型株中心のラッセル2000指数は1%値上がりした。ハイテク大手7銘柄で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数はほぼ変わらず。

  アネックス・ウェルス・マネジメントのブライアン・ジェイコブセン氏は「米製造業活動は、厳しい冬から抜け出しつつあるようだ」と指摘。「これまでにも製造業に回復の兆しが見られた後に再び落ち込むことがあった。だが、新規受注が上向いていることを踏まえると、今回の復活は本物かもしれない」と述べた。

  ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのマクロ責任者、フロリアン・イエルポ氏はISM統計について、米連邦準備制度理事会(FRB)が製造業の再活性化に成功したことを示唆しており、政策金利は長期間にわたって据え置かれる可能性があると話す。

  その上で「企業収益にとっては本質的にプラスで、米国株に加え、米国の成長モメンタムへのエクスポージャーを持つ世界株式にも恩恵をもたらす」と指摘。「短期的には、インフレが抑制された中で堅調な成長が続く『ゴルディロックス』のシナリオを裏付ける」と述べた。

  個別銘柄ではウォルト・ディズニーが7.4%下落。さえない見通しを示したことが嫌気された。

  アジア時間に再び急落していた金・銀相場が下げ幅を縮めたことも、株式相場を支えた。

  「貴金属の乱高下は、投資の意思決定において感情がなお大きく作用していることを改めて想起させた」と指摘するのは、ネーションワイドのマーク・ハケット氏だ。足元ではボラティリティーが意外なところで同時に表面化する一方で、金と銀は安全資産ではなく、むしろ「投機的な取引」のような動きを示しているという。

  その上で「昨年ビットコインを追いかけていた投資家が、次の大きなリターンを狙って貴金属に資金を振り向け、ここにきてその巻き戻しに動いている」と同氏は指摘。「これはバーベル戦略(高リスクと低リスク資産など対照的な資産を組み合わせて運用する戦略)型の市場だ。両極端で急激な動きが見られる一方、分散された株式ポートフォリオはなお底堅い。つまり、リスク資産からの全面的な資金引き揚げではなく、ポジショニングとセンチメントの問題であることを示している」と述べた。

国債

  米国債相場は下落(利回りは上昇)。ISM製造業指数が予想外に改善したことを受けて、年内の米利下げ観測が後退した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.91%3.90.81%
米10年債利回り4.28%4.41.04%
米2年債利回り3.57%5.11.45%
米東部時間16時24分

  利回りは短期ゾーンを中心に上昇。10年債利回りは4.28%に上昇し、およそ1週間ぶりの高水準となった。

  シット・インベストメント・アソシエーツの債券ファンドマネジャー、ブライス・ドティ氏は、ケビン・ウォーシュ元理事が次期FRB議長に指名されたことが、ISM製造業データに対する市場の反応を増幅させたと指摘。

  「短期金利を無理に押し下げることなく、経済ニュースに実際に反応する人物がFRB議長に就く見通しとなったことで、製造業指標の重みが増した」と述べた。ウォーシュ氏はいかなる状況でも、トランプ氏の利下げ要求に安易に応じる可能性は低いとみられている。

  ISMのデータ公表に先立ち、オラクルが人工知能(AI)インフラの構築に向けて大型起債の計画を発表したことも相場の重しとなった。

  金利スワップ市場では、ISMデータ公表後に利下げ観測が後退。次の利下げは7月になるとの見方を織り込んだ。

  一方、BMOキャピタル・マーケッツの米金利ストラテジスト、ベイル・ハートマン氏は、10年債利回りが直近の高水準である4.30%前後に戻れば、「押し目買いの機会を待っている投資家にとっては、市場に参入する魅力的な水準になるだろう」とみている。

  債券市場ではまた、ウォーシュ元理事が指名されたことによる金融政策への影響も引き続き意識された。

  2011年までさかのぼってウォーシュ氏の発言を分析したジェフリーズ・インターナショナルのチーフエコノミスト兼ストラテジスト、モヒト・クマール氏は「ウォーシュ氏はタカ派寄りで、FRBのバランスシート拡大を批判してきた」と指摘。「ウォーシュ氏はタカ派としての立場をトランプ氏に売り込んだとみられるが、それでもFRB議長の職を得た。この事実を整合させることは難しい」と述べた。

為替

  ニューヨーク外国為替市場で、ドルは主要通貨に対してほぼ全面高の展開。堅調なISM製造業データが追い風となったほか、国債利回りの上昇もドルを押し上げた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1191.763.470.29%
ドル/円¥155.58¥0.800.52%
ユーロ/ドル$1.1793-$0.0058-0.49%
米東部時間16時24分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.4%高まで上げ、日中としては1月23日以来の高値を付けた。ここ2日間の上昇率は約1.2%と、昨年4月以来の大幅高。

  BMOアセット・マネジメントのビパン・ライ氏はISM指数について「先週後半からの勢いを積み上げる内容だ」と指摘。「もっとも、ホリデーシーズン後の在庫水準の低さが新規受注を押し上げた可能性が高いほか、今後の価格上昇を見越した駆け込み需要があったとみられる点など、いくつかの注意点はある」と述べた。

  次期FRB議長にタカ派とみられるウォーシュ元理事が指名されたことで前週末に急落していた金と銀は、この日も下落。ウォーシュ氏は他の候補者よりもインフレ抑制に注力するとみられており、金の高騰を支えてきたディベースメント取引(通貨価値下落に備えた売買)の巻き戻しにつながっている。

  マネックスの為替トレーダー、アンドリュー・ハズレット氏は「金や銀を中心とする金属相場の反転がドルを押し上げている」と話す。その上で「脆弱(ぜいじゃく)かつ過度にレバレッジをかけていた投資家が市場から退場を迫られ、その恩恵はすべてドルに向かっている。金属へのマネー流入は主に、ディベースメントを意識したものだったからだ」と語った。

  円は対ドルで下落。じりじりと安値を切り下げる展開となり、一時は0.65%安の1ドル155円79銭まで売られた。ISM製造業データの発表を受けて、円売り・ドル買いの流れが強まった。

  一方、アポロ・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は、円キャリートレードが巻き戻されるリスクがあると指摘した。「投機筋の先物ポジションは大きく振れており、円を調達通貨とする取引の全体的な規模は維持されているものの、キャリートレードが急速に巻き戻される可能性があることを示している」とリポートで分析した。

関連記事:円キャリー巻き戻しのリスク、投機筋がポジション縮小-アポロ

原油

  ニューヨーク原油相場は大幅安。米国がイランと協議しているとトランプ大統領が発言し、地政学リスクのプレミアムが後退したほか、商品市場全体の売りが下げを加速させた。

  イランの最高指導者ハメネイ師は週末に「地域戦争」の可能性を警告したが、トランプ氏は両国が合意に至るとの期待を改めて示した。

  イラン外務省は、外交努力によって戦争が回避されることを望んでいると表明。米国のウィトコフ中東担当特使とイランのアラグチ外相は6日にイスタンブールで会談する予定だと、ニュースサイトのアクシオスが事情に詳しい関係者2人の話として報じた。

  カロバール・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は、「今回の下落は、需給ファンダメンタルズの変化というよりもポジション調整に近い」と指摘。その上で「新たな供給ショックがない中、原油市場はリスクプレミアムの一部を吐き出している。近い将来の混乱を織り込んでいたが実現せず、再調整の動きが広がっている状況だ」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前営業日比3.07ドル(4.7%)安の1バレル=62.14ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は3.02ドル(4.4%)下げて66.30ドル。

  貴金属相場は続落。ただ大きく売られていたアジア時間からは下げを縮めた。高値更新が続いた上昇相場からの急反落で、投資家は今後の展開を見極めようとしている。

関連記事:金と銀が下げ縮小、アジア時間の強烈な売り止む-下値を見極めへ

  金スポット価格は、アジア時間には一時10%下げていた。銀は一時16%安まで下落。銀は前週末の1月30日には、取引時間中として過去最大の下げを記録していた。

  貴金属相場はベテラントレーダーでさえ驚くほど急騰し、高値更新を重ねていた。既に過熱感があった相場は1月に入るとさらに上げが加速し、地政学的な混乱や通貨価値の下落(ディベースメント)、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に対する懸念の再燃を背景に、金と銀に投資家が殺到した。中国投機マネーの大量の流入も、上昇を後押しした。

  JPモルガン・チェースの元貴金属トレーダーで現在は独立系市場コメンテーターのロバート・ゴットリーブ氏は、「結局のところ、取引は過度に集中していた」と分析。さらなるリスクを取ることに慎重になれば、市場の流動性は抑制されると付け加えた。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時3分現在、前営業日比249.31ドル(5.1%)安の1オンス=4644.92ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は92.50ドル(1.95%)下げて4652.60ドルで引けた。

原題:Stocks Climb on Solid Factory Data as Bonds Slide: Markets Wrap

Treasuries Fall After Manufacturing Surge Hits Rate-Cut Bets (1)

Dollar Extends Advance to Second Day as Metals Drop, Oil Sinks

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Oil Plunges as Iran Risks Ease and Commodities Selloff Deepens

Gold Slump Eases as Traders Weigh Unwinding of ‘Crowded’ Bets(抜粋)