- 資産価値下落が10%超のファンドも、大半は強制清算免れている様子
- 金の記録的上昇、レバレッジ志向の中国の投資家が後押し-今や裏目

金相場の記録的な上昇の背後には、ヘッジファンドから一般家庭の主婦までレバレッジ志向の中国の投資家たちがいた。だが、まれに見るほどの相場の急激な反転で、今やこうした投資家が多額の損失を負っている。
杭州在住の主婦、メリー・チェン(42)さんにとって、貴金属投資への挑戦は1週間ともたなかった。デリバティブ取引の経験は全くなかったが、友人の勧めで先週月曜日の1月26日に口座を開設した。
最初はうまく行ったように思われた。100万元(約2230万円)の投資額に対し、わずか48時間で60%の利益が生じた。だが、金曜日の急落でその利益は吹き飛んだ。そればかりでなく75万元の損失が発生し、強制清算に追い込まれた。
「値動きがこれほど激しいなんて、想像もしていなかった」とチェンさん。「まるでマカオのカジノに行ったような気分だ」と語った。口座は閉じるつもりだという。
チェンさんは、1月30日の急落以前に貴金属に殺到していた多くの投機家の代表的な例だ。この急落では、レバレッジをかけた先物ポジションの強制清算が相次ぎ、広範な損失が発生した。
急落の一因は、トランプ米大統領がケビン・ウォーシュ氏を次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名し、ドルが上昇したことだ。ただ、市場関係者の多く既に、貴金属市場の過熱について警鐘を鳴らしていた。
2月2日は金のスポット価格が最大で10%下落。前営業日に取引時間中として過去最大の下げを記録した銀は、一時16%安となった。
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今回の急落に際し、中国のクオンツヘッジファンドが採用するトレンドフォロー型コモディティー・トレーディング・アドバイザー(CTA)モデルには調整する時間がほとんどなかったと、上海千象資産管理のパートナー、リュ・チェンタオ氏は指摘。中国のクオンツヘッジファンドがコモディティーを保有するのは通常、3-20日間でしかないが、それでも展開があまりに速く、対応は後手に回ったという。
リュ氏によれば、非鉄金属やエネルギー先物も下落したため、1月30日と2月2日でCTA運用者の純資産価値は厳しい圧力にさらされている公算が大きい。
ただし、CTAファンドはさまざまなコモディティーに分散投資していることが多く、レバレッジは300%未満に抑えられていることが一般的なため、1月30日以降の損失は今のところ管理可能な範囲内で、大半は強制清算を免れていると、リュ氏は述べた。
とはいえ、一部のCTAファンドではピーク時の資産価値からの下落率が10%を超えていると、上海を拠点とするクオンツファンドの幹部は述べ、自身が所属するヘッジファンドでも損失を限定するため、先週のうちに貴金属先物ポジションを大きく削減したと明らかにした。この幹部は部外秘の事情を話しているとして、匿名を要請した。
相場の混乱が起きたのは、中国の春節(旧正月)を控えた時期でもあった。上海拠点の別のクオンツファンドによると、1週間余りにわたって中国市場は休場となるが、国外では通常取引が続くため、持ち越しのリスクを避けようと中国のCTAファンドは春節前にポジションを30-50%縮小することが多い。このポジション縮小の動きは、1月30日時点で既に始まっていたという。
中国の銀行もまた、個人投資家向けの金積立商品に対するリスクを抑える措置を先週講じた。中国工商銀行や中国建設銀行などは、最低預入額を引き上げるか、購入額に制限を設ける計画だ。
各国・地域の中央銀行がドルの代替として保有を拡大する中で、金の価格は数年にわたって上昇を続けてきた。2025年に入ると、いわゆるディベースメント(通貨価値の下落を見込む)取引に世界の投資家がこぞって参入。個人から大規模なファンドまで中国の投機筋もこれに加わり、過去数週間の急騰を後押しした。
一方で、中国で最もよく知られた投資会社の一つは、12月にこのトレーディングから撤退した。50億元を超える資産を運用するマクロヘッジファンド、上海半夏投資管理センターは昨年末までに保有していた金のポジションを全て売却したと、創業者の李蓓氏はインタビューで明らかにしていた。
李氏は証券時報に対し、金相場は急落よりも高止まりの可能性の方が高いとの見方を示しつつ、ロシアなどの中銀は金を売却しており、長期的な均衡水準と比べて買われ過ぎていると指摘。中国の優良銘柄が強含む可能性を踏まえると、金を保有し続けることの機会コストは極めて高いと説明していた。
一部の投資家は金を支持する立場を変えていない。ジェフと名乗る杭州在住の個人投資家は、現物とスポット取引で金資産を長年にわたって蓄え、今やその価値は約150万ドル(約2億3300万円)に上る。
「世界は混沌としている。だから金を買うんだ」と話すジェフ氏だが、投資手法は慎重で、レバレッジをかけた先物では金を買わない。銀の先物には約50万ドル投資していたが、リターンが100%となった先週全て売却し、急落の被害に遭わずに済んだ。
同氏はドル安や米中の覇権争い、人工知能(AI)の進展といった要因で支えられるとの確信を一段と強め、長期的な買いの好機を探しているという。
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