• 損益分岐台数を引き下げ、悪いときに踏ん張れる構造をつくると近氏
  • 豊田会長の側近で意思疎通はスムース、率直な物言いも武器にと識者
トヨタ自動車の次期社長に選ばれた近健太氏
トヨタ自動車の次期社長に選ばれた近健太氏Photographer: Soichiro Koriyama/Bloomberg

Tsuyoshi Inajima

世界最大の自動車メーカー、トヨタ自動車の次期社長に選ばれた近健太執行役員(57)は経理畑を長く歩んだ実務家タイプだ。会見では創業期に「大番頭」としてトヨタを支えた石田退三氏の名前を挙げ、激動の自動車業界に立ち向かう意向を示した。

  「損益分岐台数をしっかり引き下げて悪いときにも踏ん張れる」ー。近氏は6日の会見でそのような会社にしたいと抱負を述べた。エンジニア出身で3年前に53歳の若さで就任した前任者とは対照的に物静かな雰囲気を醸し出している。

  近氏は最近、豊田章男会長と会った際に石田氏の名前が出たとのエピソードも明らかにした。

Toyota Motor Names Kenta Kon as New CEO
会見する近氏(右)と佐藤氏(6日)Photographer: Soichiro Koriyama/Bloomberg

  石田氏はトヨタ創業者で章男氏の祖父にあたる豊田喜一郎氏の時代の幹部で、大番頭的な存在として会社の発展を支えた。近氏は石田氏が「ものすごくお金にこだわりがあって、無駄なものには一切お金は使わない」厳しさがあった反面、将来に必要な夢のある分野には思い切って大きな投資をしたと紹介した。

  それは現在も変わらないとし、トヨタだけでなく自動車産業や日本にとって必要なときにしっかり投資できる体質をつくれとの会長のメッセージと受け止めたと述べた。

  自身も「車をしっかり作ってもらえるためのお金とか収益、数字というものにはめちゃくちゃこだわりがある」とし、今後のコスト管理についての質問に「厳しくなると思う」と回答した。

経営のスピード上げる

  電動化や自動運転など新技術への投資が自動車メーカーの収益を大きく圧迫する中、トランプ政権の追加関税やレアアースなど資源確保といったなど新たな課題も出てきている。そうした中でトヨタは新社長のもとでコスト重視の原点に立ち戻ることになる。

  トヨタは今回の人事の目的について社内外の環境変化を踏まえ、「経営のスピードを上げていく」ことがあるとし、トヨタの使命を果たせる体制を整える狙いがあるとしている。

  近氏は2016年まで約8年間豊田氏の秘書を務めた。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは近氏について、長く豊田会長の側近として仕えてきており、「意思疎通は非常にスムース」だと評価。トヨタには優秀な社長候補が大勢いる中でも、近氏は経験・能力に加えて、率直で分かりやすい物言いがトップとして大きな魅力であり武器になり得るとの見方を示した。

TOBへの関与続ける

  近氏は経理部門の役員などを経て、2022年4月に取締役兼副社長に就任した。その後、トヨタの子会社で実験都市や自動運転技術の開発などを手掛けるウーブン・バイ・トヨタの幹部となっていたが、25年1月にトヨタに復帰していた。

  近氏はトヨタ不動産の取締役も務め、トヨタグループによる豊田自動織機への株式公開買い付け(TOB)計画にも携わってきた。TOBについてはこれまでと同様、トヨタ不動産取締役としてトヨタの情報を遮断するなど利益相反の問題を管理しつつ、関与を続けていくと話した。

  佐藤恒治社長は副会長になり、豊田会長は留任する。人事は4月1日付。佐藤氏はわずか3年での交代となる。今後は新設するチーフ・インダストリー・オフィサー(CIO)も兼任し、「産業全体に軸足」を置く。自動車産業が厳しい事業環境に直面し、業界連携などが重要になる中、日本自動車工業会の会長のほか経団連副会長も務めている佐藤氏には「果たすべき役割が大きい」とした。

  一方、トヨタは同日に今期(26年3月期)営業利益見通しを前期比21%減の3兆8000億円に上方修正した。円安の影響で前回の見通しから3100億円の増益要因となるなど追い風になったが、ブルームバーグが事前に集計したアナリスト22人による予想平均値(3兆9420億円)には届かなかった。

出所:ブルームバーグ、トヨタ自動車

関連記事
トヨタ新社長に57歳近氏、豊田織機TOBも担当-佐藤氏は3年で交代 (1)