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就任からわずか3カ月、高市早苗首相は大きな賭けに出た。日本初の女性首相は8日に衆院選を実施し、高い内閣支持率を新たな連立政権への明確な信任に結び付けようとしている。

衆院選に勝利すれば、経済成長に向けた歳出・投資計画、家計へのインフレ圧力を和らげるための消費税減税、外国人政策や防衛力の強化について、国民の支持を得ることになる。

高市政権は有権者の信任を得られるのか?

リスクは、高市首相の個人的な人気が自民党への支持に直結しない可能性がある点だ。自民と日本維新の会の連立与党は現在、衆院でかろうじて過半数の議席を維持している。これを拡大できなければ、野心的な財政支出計画への支持を見誤った英国のトラス元首相のように、短命政権に終わる恐れがある。

1月23日の解散時点で、衆院465議席のうち与党は、自民会派に加わった無所属議員を含めて過半数ぎりぎりの233議席を占めている。

高市首相は自身の人気が衆院選での党の勝利につながることに賭けているが、投票動向は二つの要因で複雑化している。一つは新たな連立与党の選挙での実力が未知数であること、もう一つは1月に結党した中道改革連合の存在感だ。

中道は、立憲民主党と自民党の長年の連立パートナーだった公明党が結成した。解散時に172議席を有しており、日本の政治的右傾化に歯止めをかけるべく勢力拡大を目指している。

市場の変動

どのような選挙結果になっても、日本の財政はさらなる圧力を受ける見通しだ。高市首相が勝利した場合、景気刺激策を推進できる。食料品の消費税率を2年間ゼロにする計画は約5兆円の税収減となるが、野党はこれより財政負担の大きい食料品の恒久的減税や一律の消費税率引き下げを主張している。

こうした政策は、長期的な財政の行方を懸念する投資家を動揺させており、1月20日には30年物国債利回りが過去最高の3.88%に達した。

高市首相が勝利すれば、日本銀行の金融引き締めの道筋を複雑にし、円安圧力を強めるとの見方も出ている。円は先月、対ドルで1年半ぶりの安値を付け、物価の上昇圧力を増大させた。日銀の利上げが遅れれば遅れるほど、円安も一因となるインフレが家計の購買力をむしばみ続ける。

一方、株式相場は高市首相勝利の見通しが追い風となってきた。追加の財政支出と円安継続への期待から、日経平均株価は3日に一時5万4782円83銭と取引時間中の最高値を更新した。国債利回り上昇と円安が進む中、いわゆる「高市トレード」による株価上昇は高市首相の好印象を支える一つの指標となっている。

公明党の支援なしの選挙

四半世紀にわたり自民との連立政権を与党として担ってきた公明が、一転して立憲民主と新たに中道を立ち上げたことは、今回の衆院選における大きな力学の変化だ。

創価学会を支持母体とする公明は、選挙区によっては最大で約2万票を動員できるとされている。こうした票が単に中道や他の野党へ流れるだけでも、最大46の自民議席が危うくなる可能性がある。

高市首相の新たな連立パートナーが選挙に与える影響も不透明だ。維新は政策面では公明より自民に近いが、地盤とする大阪以外の地域では公明と同等の集票能力を持たない。自民と維新は小選挙区で候補者を調整しておらず、連立による相乗効果は限定的との見方が強まっている。

得票率の低下

前回の衆院選では、与党は多くの有権者の支持を失うという衝撃的な結果に直面した。全国47都道府県の中で例外だったのは、当時の石破茂首相の地元である鳥取県だけだった。

2024年10月の衆院選と25年7月の参院選の両方で、自民支持者の票が他の政党に流出した。高市首相は8日の衆院選で、大半の都道府県でその傾向を逆転させようと狙っている。

勢力図の変化

最新の世論調査では、自民は解散時の199議席を大幅に上回る議席を獲得し、単独で過半数を確保する可能性が示されている。

ただ、こうした調査結果は公明が野党に転じた影響を正確に反映していないかもしれない。また、高市首相は、ソーシャルメディアを活用し、綿密に練られた政策で影響力を増す小規模政党の存在を無視することはできない。

176の比例代表の議席配分では、これらの小政党の得票率が決定的な役割を果たす可能性がある。多党化が進めば、高市氏の政策運営は複雑化するだろう。

玉木雄一郎氏率いる国民民主党は、21年衆院選で4.5%だった比例代表の得票率を、24年衆院選では11.3%へ倍増させた。国民民主は国会での存在感の高まりを背景に、政府に所得税の非課税枠拡大を働き掛けた。

新興政党も勢いを増している。参政党は昨年7月の参院選で議席を1から15に増やした。この勢いは衆院選にも波及する見込みだ。同参院選で初めて議席を獲得したチームみらいも報道各社の情勢調査で躍進する可能性が報じられている。

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