衆議院選挙の結果が出た。自民党352議席、中道49議席。自民党はすべてのメディアの議席予想の上限を上回り、中道は下限予想を下回った。比例代表の名簿が足りず他党に議席を譲った分もある。中道の前例のない負けっぷりはともかく、自民党は歴史的大勝利以上の勝ちっぷりだった。政治史に残る出来事であることは間違いない。そして中道以上に痛手を被ったのは主要メディアだろう。有権者と対峙することもなく、横並びで全滅した。敗因は独自性のない同調圧力とバイアスだ。高市人気のバブル化に加担したといったほうがいいかもしれない。

その代表が朝日新聞と週刊文春だ。朝日は2日付の朝刊で「自維300超議席をうかがう」と一面トップで報じた。サブタイトルには「中道ふるわず半減も」とある。衝撃の報道だった。それ以前の予想は「自民単独で過半数獲得か」、これが標準的予想。上限も「絶対安定多数」(261議席)が関の山。これが朝日報道で一変する。自維300超と中道半減の衝撃だ。読売新聞を例外としてほぼすべての新聞、テレビが「300超」で足並みを揃えた。各社とも調査の結果だと強弁するだろう。だが、主要目メディアが朝日に追随した結果、高市人気はバブル化した。そんな気がする。

衝撃の朝日調査が従来と変わっている点がある。「中盤情勢を探る」とあることだ。これまで主要メディアは選挙の序盤と終盤に同様の調査を行なってきた。朝日は中盤情勢と銘打ってこの1回きり。これが様々な憶測を呼んだ。高市政権を支持するジャーナリストは「自民党を油断させる作戦」と切り捨てた。朝日は主要メディアの中ではアンチ高市の筆頭格。中道の奮起を促す戦略との解釈だ。個人的には「そうではないだろう」と考えていた。

朝日は電話とネットを含めて約37万人(電話約2万人、ネット約35万人)を対象に

調査を行なっている。これだけの規模になるとコストもかかる。おそらく数億円単位になるのではないか。部数の激減で経営難が囁かれている会社だ。これを選挙中に2回行うのはリスクが大きい。だから1回にした。これが筆者の邪推だ。担当者は早くから有権者の投票行動が変化していることに気づいていた。

ネット調査を増やせば自民党の議席予想が増える。データを見て担当者は驚いたのではないか。現場の取材を加味すれば数字の修正は可能だ。だが無党派層の投票行動を正確に予想することは難しい。だからデータの予想をそのまま記事にした。2日に掲載すれば他社は引っ張られる。朝日はそこまで考えたかも。だから経営難の中で博打に打って出た。情勢調査に定評のある朝日の“意地”かもしれない。

これが見事に的を射た。同調圧力の強い既存メディアに加え、ネットの情勢担当者まで300超に追随した。これで流れは決まった。高市人気とは無関係にサナエ人気がネット上を駆けめぐる。そしてバーチャルの流れがリアルの世界に反映する。こうなれば有権者は知らず知らずに強い方に靡く。サナエ人気と高市人気が相互に影響しあって自己増殖の好循環を生み出したのだ。

これに週刊文春が追随する。衰退する業界の中でひとり勝している週刊誌だ。同誌もアンチ高市。高市総理就任以来この姿勢を貫いている。衆院選にあわせて高市批判の誌面づくりが勢いを増す。統一教会の「TM(トゥルーマザー)特別報告書」に高市総理の名前が出ていることを特集し、ダーティーイメージの印象操作に乗り出した。

いつもならこれが効いて高市人気が陰るはずだが、今回は別のメディアが中道・野田代表も同協会の支援を受けていたことを、写真付きでスッパ抜く。週間文春はどうしてこれを後追いしなかったのだろう。有権者の間に文春報道に対する不公平感が広がる。まだある。「NHKの日曜討論ドタキャンは2日前から準備されていた」とたて続けにバイアス気味の批判記事を掲載した。

スキャンダルに乗じて販売部数を伸ばすのが週刊誌の常道でもある。高市批判をするのは一向に構わないが、かつてのような影響力がまるでない。高市氏にまつわるマイナス情報を書いても書いても支持率に変化は起きなかった。それどころかバイアスのかかった報道姿勢が見抜かれ、週刊文春が培ってきた読者との信頼関係にヒビが入ったかのようだ。これが逆にサナエ人気のバブル化を増幅した。

これが今回の衆院選で考えた筆者のナラティブだ。かくして自民党は図らずも歴史的な大勝利を手にした。