• 孫会社となるX、マスク帝国の消費者インターフェースに進化も
  • 「Xアプリ上で生活ができるようにしたい」、マスク氏語る
イーロン・マスク氏
イーロン・マスク氏Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg

Edward Ludlow

テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は、人工知能(AI)開発のxAIを宇宙開発企業スペースXの下に統合する。この決定を巡る騒動の陰には、ソーシャルメディアのXを「何でもアプリ」に変身させ、新たに構成されたマスク帝国の中で、消費者向けプラットフォームを支える基盤に据えたい野望がある。

  xAIで最近行われた全社会議で、マスク氏はXの位置付けや役割、現状を説明した。3年前の買収時から構想は大きく変わらず、Xは依然として重要だ。孫会社となったことで、Xへの自立採算を要求する圧力は弱まった。AIの学習データ源やチャットボットのGrokを配信する基盤という役割は、数値化が難しいが、マスク氏が約束した暗号化メッセージ機能や個人間決済を実現できれば、その潜在力は過去最高に達する可能性がある。

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  全社会議ではXの勢いを示す数値も示された。マスク氏によると月間アクティブユーザー(MAU)は約6億人、アプリのインストールは10億件を超えている。1月は過去最高のエンゲージメントを記録し、初回ダウンロードは前月比50%近く増えた。サブスクリプション収入は年間経常収益(ARR)で10億ドル台に乗せた。

  Xの中核チームは約25人のエンジニアなどに縮小され、買収前の約2000人を大幅に下回る。xAIのエンジニア約30人も、Xの推薦システムに従事しているとマスク氏は述べた。画期的な効率向上だと評価される一方、不具合やモデレーション不足を指摘する声もある。ダイレクトメッセージは音声・動画通話に対応した完全暗号化仕様へ再構築され、単独アプリとしてのX Chatが準備中。X Moneyも限定的な外部テストを実施する見通しだ。

  「望むならXアプリ上で生活できるようにしたい。より有用にすれば、毎日アプリを使う動機がその分強まる」とマスク氏は述べた。

  この野心は特に新しくない。マスク氏は2022年に「『何でもアプリ』としてのX創設を加速させる」と語っていた。だが米国ではいわゆる「スーパーアプリ」は定着せず、メタ・プラットフォームズも決済構想「リブラ」を断念した。

  現在のXにとって違うのは、企業構造だ。Xは単独企業としてではなく、宇宙開発大手に支えられ、電気自動車(EV)大手のテスラから20億ドルの出資を受ける、AI企業と消費者を結ぶインターフェースとして位置付けられる。GrokはXだけでなく、テスラ車内でも稼働する。一方で統合はリスクもはらむ。Grokは未成年の性的画像を生成することから、世界的に反発を招き、欧州で調査を受けている。

  これは旧ツイッターを巡る成長ストーリーの再来ではない。インストール数10億超のプラットフォームが、AIと決済、通信を配信するエンジンになるかどうかの賭けだ。全社会議で変わったのは夢ではなく、組織図だ。

原題:Musk Merger Puts New Twist on X as Everything App: Tech In Depth(抜粋)