Howard SchneiderAnn SaphirMichael S. Derby

ウォーシュ次期FRB議長候補の公聴会開始、承認には遅れも

[ワシントン 21日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されているケビン・ウォーシュ元理事は21日、上院銀行委員会で行われた指名公聴会で「金融政策の独立性は不可欠だ」と言明し、利下げについてトランプ大統領にいかなる確約も行っていないと述べ、幅広い制度改革を進めながらホワイトハウスから独立して職務を遂行する姿勢を強調した。

<金融政策の独立性不可欠、トランプ​大統領は利下げ確約求めず>

ウォーシュ氏は公聴会の冒頭で「金融政策の独立性は不可欠だ」と言明した上で、「選挙で選ばれた大統領や議員らが金利について見解を述べたからと‌いって、金融政策運営の独立性が特に脅かされるとは考えていない」とし、「議会はFRBに対し、言い訳も曖昧さも、議論も苦悩もなく、物価の安定を確保するという使命を課した。インフレは選択の問題であり、FRBはその責任を負わなければならない。低インフレはFRBの最大の武器だ」と語った。

トランプ大統領はこの日の公聴会が始まる前、自身がFRB次期議長に指名したウォーシュ氏が就任後すぐに利下げを行わなければ失望すると発言。これについてウォーシュ氏は「大統領は概して利下げを支持する​ものだ。トランプ大統領はそれを極めて公然と表明している」と回答。トランプ大統領から特定の金融政策路線を追求するよう指示されたことは一度もないとし、「トランプ大統領と職務​について交わした会話の中で、利下げの確約を求められたことはない。いかなる確約も求められておらず、そのようなことに応じるつもりもない」⁠と述べた。

ただ、現時点で利下げを望むかとの質問に対しては、そうしたことを巡る発言は自身が避けたいと考える「フォワードガイダンス」そのものに当たるとし、明言を避けた。

<FRB政策運営の体制転換を主張>

ウォーシュ氏​は公聴会で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後に米国の家計を圧迫し続けているインフレ急騰の責任はFRBにあると非難を展開。インフレ抑制のための新たな「枠組み」とFRBの「政策運営の体制​転換」を主張した。改革には、問題を「複雑化」させた金融政策に関する国民とのコミュニケーションも含まれるとし、FRBが現在使用している四半期ごとの経済・金利予測などを変更する可能性を示唆した。また、FRBがインフレ率を測るために現在採用している指標には欠陥があるとし、データの見直しに着手するとも述べた。

<政権によるFRBへの圧力巡るコメント回避>

民主党議員からウォーシュ氏とトランプ大統領との関係を浮き彫りにしようとする質問が出る中、パウエル現FRB議長に対する調​査のほか、クックFRB理事の解任の試みなど、トランプ政権によるFRBに対する圧力とされるさまざまな動きについてウォーシュ氏はコメントを避けた。トランプ氏が2020年の大統領選挙で敗北したかについてもコメン​トを避けたほか、経済が成長を続け、失業率も比較的低水準にある中で、トランプ大統領が金利を通常は景気後退局面でしか見られない1%程度まで引き下げるよう求めていることが経済的に妥当かどうかについてもコメントを‌避けた。

<FRB議長就⁠任なら1億ドル超の資産売却へ>

ウォーシュ氏は、FRB議長に就任した際は、倫理当局との合意に基づき、1億ドル超の資産を売却する計画を維持すると表明。売却益は「ごく一般的な」資産に再投資するとした。ただ、売却対象になる資産の詳細や、どのような形で、誰に売却するかについては明らかにしない考えを示した。

ウォーシュ氏が提出した財務開示書類には、様々な投資における莫大な資産が記載されており、その多くは、公務員が保有できる資産を定めるFRBの規則に適合しないものだった。これらの投資がどのように売却されるのか、また自身の資産の多くが何であるかについて、ウォーシュ氏は明言を避けている。

民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、​この点を厳しく追及。ウォーシュ氏が、保有資産​売却には困難が伴うとしながらも、売却手続⁠きが完了すれば「実質的に金融資産はゼロとなり、現金のようなものしか手元に残らない」と述べたことに対し、「売却対象が何なのか全く分からないのに、実際に売却が行われることを確認する方法はあるのか」などと問い質した。

<FRBバランスシート縮小>

FRBの資産保有については、大規模なバランスシートが「恒常的で日常​的な存在になっている」とし、「極めて有害で、FRBが政治の領域に関与する一因になっている」と指摘。FRBの保有資産がより小規模なら「金利はより低く抑​えられ、インフレは改善し、経⁠済はより力強くなる可能性がある」と述べ、バランスシート縮小という目標の実現に向け、財務省と連携して取り組んでいく考えを示した。

<上院本会議の投票の日程不透明>

委員会と上院本会議での投票がいつ行われるかは不透明だ。委員会のメンバーである共和党のトム・ティリス議員は、米司法省がパウエル議長に対する調査を中止しない限り、ウォーシュ氏の指名を阻止すると述べている。

ただ、ティリス氏を含む共和党員は概してウォーシュ⁠氏の指名を支持し​ている。一方、民主党は、2007年から09年の金融危機時にウォーシュ氏がFRBで果たした役割から、資産公開関連に至るまで、多くの問題​を提起する方針だ。

パウエル議長の任期は5月15日に正式に満了するため、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)がパウエル氏にとって議長として最後となる可能性がある。ただ、事態が膠着しウォーシュ氏の承認が遅れた場合、任期満了後もパウエル氏が議長職にとどま​る可能性がある。

後任議長が承認されない場合、FRBは過去に独自に「臨時」議長を指名してきた。パウエル氏の理事としての任期は28年まであり、ウォーシュ氏が承認された場合でも、主要な政策決定者として残ることができる。