会見で涙を流す阿部慎之助監督=26日午前、千代田区の球団事務所(今野顕撮影)

プロ野球巨人の阿部慎之助前監督(47)は長女(18)に対する暴行容疑で警視庁に現行犯逮捕された。きっかけは長女から児童相談所への通報。SNS上では「暴力をふるった人間が悪い」という意見が多い中、逮捕に踏み切った警察や児相の対応を疑問視する投稿もみられる。ただ、痛ましい児童虐待事件が相次ぎ、近年は警察と児相の連携は強化されているのが実情だ。専門家からは今回の事件を機に、通報をためらうなどすることを懸念する声も上がる。

阿部前監督は25日夕、自宅で長女の胸ぐらをつかんで倒すなどしたとして現行犯逮捕され、26日未明に釈放された。

長女は暴行を受けた後、対話型の生成人工知能(AI)に相談し、回答に基づき児相へ通報。児相が「父親から暴行を受けた」と110番し、渋谷署員が駆けつけた。

当時自宅には次女(15)と妻もいたが、いずれもけがはなく、過去に家族から警視庁への相談もなかったという。

「こうしたケースで逮捕は珍しい」。今回の事件について、ある警察幹部はこう語る。今回の捜査には携わっていないが、一般的に虐待事案では子供を施設などで保護し、親を逮捕せずに取り調べることが多いとする。

悪質な事案や緊急性がある場合は逮捕に踏み切ることもあるが、児相とともに、できるだけ親子を引き離さないような対応を取っているといい、任意同行を求めても拒否した場合などには逮捕することもあり得るとの見方を示した。

一方、児相の対応について、児相元職員である長野大社会福祉学部の井上景(たかし)准教授は「当時自宅にいた姉妹2人の安全にもかかわる事案。警察と情報共有するのは適切だ」と指摘する。

児相は原則、児童福祉法に基づき、18歳未満の子供に関する事案に対応し、今回のように18歳以上から通報があった場合は、状況に応じて本人に代わって警察へ通報することもある。

以前は児相と警察との連携が十分でなく、全国で虐待死事件が相次いだことなどを受け、連携を強化。現在は多くの自治体で現職の警察官が児相に出向したり、警察OBを再雇用したりして事案に対応しているという。

今回の事件を受け、井上氏は、虐待を受けた子供が「『自分の通報で親が逮捕されてしまう』と児相への相談を躊躇(ちゅうちょ)しないか」と懸念する。

虐待事案の中でも軽微で改善が見込まれるケースであれば、親子を隔離するのではなく、子供の安全を確保した上で指導や生活支援を行うことが子供の将来にとって最善であると判断されることは多いと指摘。「相談は24時間365日受け付けている。危険だと思えば通報、相談はするべき。児相はより適切な対応をするよう心がけていかなければならない」と訴えた。(鈴木源也)

▽【手紙全文】阿部慎之助監督の18歳長女の手紙「父が目前で連行される姿をみて、私は泣き崩れた」<日刊スポーツ>2026年5月26日12時30分

巨人は26日、阿部慎之助監督(47)が辞任することが決まったと発表した。シーズン途中での監督退任は球団史上初めて。前日25日に発表された通り、橋上秀樹コーチ(60)が26日のソフトバンク戦(東京ドーム)から代行監督を務める。巨人でのプレー経験のない監督は球団史上初となる。

阿部監督は謝罪会見に出席。代理人からの18歳の娘による手紙が読み上げられた。

以下、全文

報道関係者の皆さまへ。今回の件につきましては家庭内のことにもかかわらず大々的な報道になってしまったこと、大変申し訳ございませんでした。これは私の意思で書いています。父にはこのような説明はいらないと言われましたが、事実とは異なる点がSNSでも臆測や報道でなされており、この点についてお伝えさせて頂ければと思います。

まず、殴る蹴るといった事実はございませんでした。報道では殴られたなどとありますが、私の過度な状況説明によって報道内容が事実と異なってしまったことについては明確にお伝えさせて頂ければと思っております。父とのこのような大がかりなけんかは初めてのことであり、ChatGPTに相談した結果、匿名で相談できる児童相談所があるということで、電話をさせていただきました。どのようにすればわからないと相談しましたが、どうすればいいかといった意向が聞かれることなく警察に通報されるという結果になってしまいました。警察が来て一番驚いているのは私自身です。父が目前で連行される姿をみて、私は泣き崩れてしまいました。みなさんをお騒がせしてしまい大事になったこと深く反省しております。大変申し訳ありません。

実際、父はいつも陽気で私とはダジャレを読みあい笑い合う仲で、一緒に食事にも出かける通常の家族として行動しています。私のことを心配されている方をたくさんいらっしゃると思いますが、この点につきまして大丈夫ですので、ご心配ありがとうございます。このような大事に発展してしまったこと、私が言うのもなんですがとても恥ずかしく思います。いまさらとはなりますが、けがに関しては私の体が丈夫だったこともあり心配はご無用ですのでご安心ください。多方面にご心配おかけし、誠に申し訳ございません。父とはすでに仲直りをしておりますので、ご安心ください。最後になりますが、この先家族や父や私のことで、SNSでたたくといった誹謗(ひぼう)中傷や、さらし行為はなかなかこのご時世、おさまらないかと思いますが、なるべく控えて頂けること切に希望しております。

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阿部氏は25日、暴行の疑いで警視庁に現行犯逮捕された。

渋谷区内の自宅で18歳の長女と15歳の次女のけんかを止めようとして、仲裁に入った。しかし、娘に言い返されたことで「カッとなった」などと供述している。仲裁した際にたたかれた形になった長女が児童相談所に通報した。26日午前0時すぎ、調べを受けた渋谷署から釈放された。

阿部氏は00年ドラフト1位で入団し、通算2000安打、400本塁打を記録。打てる捕手として長年チームの主軸として支えてきた。19年限りで現役引退し、20年から2軍監督に就任。1軍のコーチを歴任し、24年から1軍監督に就任すると、1年目でリーグ優勝。昨季は3位で3年目の今季はここまで24日終了時点で24勝22敗で3位につけていた。通算成績は332試合で171勝150敗11分け。

◆阿部慎之助(あべ・しんのすけ)1979年(昭54)3月20日生まれ、千葉県浦安市出身。安田学園-中大を経て、00年ドラフト1位で巨人入団。04年4月に当時の日本記録に並ぶ月間16本塁打。09年日本シリーズMVP。12年は首位打者、打点王、最高出塁率に輝き、MVP、正力松太郎賞。17年に通算2000安打。19年現役引退。通算2282試合、2132安打、406本塁打、1285打点、打率2割8分4厘。ベストナイン9度、ゴールデングラブ賞4度。20年から巨人2軍監督。22年から1軍コーチを務め、24年に1軍監督就任。00年シドニー五輪、08年北京五輪、09、13年WBCで日本代表。180センチ、88キロ。右投げ左打ち。