2026年5月27日、米連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事がスタンフォード大学の経済政策研究所(SIEPR)が主催するフォーラムで講演を行い、金融政策とインフレ、AI(人工知能)の影響について言及しました。
公式に発表された発言の正確な要旨と、実際の文言(抄訳)は以下の通りです。
金融政策と利上げへの言及(核心部分)
クック理事は、基本シナリオとしては「今後数ヶ月でインフレの低下(ディスインフレ)が再開する」と見ているものの、インフレ率が目標を上回る状態が長引くリスクに強い警戒感を示し、「必要であれば利上げを行う用意がある」と明言しました。
【実際の発言(公式原稿より)】 「私は(雇用と物価の安定という)我々の課せられた2つの責務(デュアル・マンデート)の両面においてリスクが高まっていると見ており、リスク管理の観点から、現時点では金利を据え置くことが適切な行動であると考えています。
しかし、私のリスク評価を明確にしておきたいと思います。リスクは依然としてインフレの上振れ方向に傾いています。 5年間にわたり目標を上回るインフレが続いた後、私は高インフレが価格や賃金の設定行動に定着してしまうリスクに特に警戒しています。そのため、期待されるインフレの低下がタイムリーに現れない場合、私は利上げを行う用意があります。」
インフレを押し上げている要因への分析
物価が「明らかに間違った方向に動いている」とし、その要因として以下の3つのショックを挙げています。
- 関税(Tariffs): 昨年の関税導入が物価水準を押し上げた(ただしこれは一時的な一回限りの影響で、間もなく和らぎ始めると分析)。
- 中東情勢(イラン紛争): 2月下旬に始まったイランを巡る紛争に伴う原油価格の上昇。
- AI需要の急増: チップやソフトウェアへの投資需要の急増、および建設作業員の賃金上昇圧力。
雇用市場とAIについての見解
- 雇用市場の現状: 一部で人員削減の発表があるものの、失業保険申請件数は低水準で安定している。ただし、中東紛争による不確実性などから、労働市場の下振れリスクは高まっている。
- AIがもたらす影響: AIは長期的には生産性を向上させ、新たな雇用を生み出してインフレ圧力を下げる原動力になると楽観視している。しかし、短期的には「雇用の創出よりも先に、AIによる雇用の喪失(代替)が先行する可能性( churn:労働市場の流動化・雇用の入れ替わり)がある」と警告しました。
まとめ
現在のFRBの基本路線である「利下げ」への期待を牽制し、中東の紛争(原油高)やAIバブルによる物価高が長引くようであれば、据え置きにとどまらず追加利上げという引き締め策も辞さないという、タカ派寄りの強い姿勢を示した発言として市場に受け止められています。