財政法が時代に取り残されている実態を裏付けるため、あらためて日本の資産状況を概観してみよう。財務省の発表によれば、政府が保有する総資産は2024年3月末現在で約783.4兆円である。もちろん、政府は同時に1,400兆円を超える負債(国債など)を抱えており、会計上は債務超過の状態にある。しかし、これはあくまで財務省が説明する一面的な「負の側面」に過ぎない。
政府が保有する主な資産内訳を見てみよう。
•有形固定資産(国有財産など : 約194.6兆円(道路、河川、国有林野、庁舎、防衛施設など)
•有価証券(外国債券など : 約125.6兆円(外国為替資金特別会計などで管理)
•貸付金 : 約125.1兆円(財政投融資などによる地方自治体や独立行政法人への貸付)
•運用寄託金 : 約114.7兆円(GPIF等に寄託されている分)
•出資金 : 約97.6兆円(国際機関や政府系企業への出資)
•現金・預金 : 約25.1兆円
これに加えて、日本には以 下のような莫大な資産が積み上がっている。
•外貨準備高 : 約1.38兆ドル(約220兆円規模)
•年金積立金(GPIF) : 株高に伴う含み益が100兆円強と推測される
•個人金融資産 : 2,351兆円(日本銀行「資金循環統計」2025年12月末現在
•企業内部留保 : 638兆円(財務省「法人企業統計調査」2025年12月末現在)
さらに言えば、これら以外にもある
・土地・住宅・工場設備・インフラなどの「非金融資産」が日本全体で3,000兆〜4,000兆円規模に達すると推計されている
・知的財産や人的資本といった「見えない資産」も存在している。
政府保有資産に個人金融資産を加えれば、日本国の資産は政府の負債を大幅に上回っていることは明白だ。民間部門の負債を差し引く必要があるとはいえ、日本には紛れもなく世界屈指の莫大な資産が存在しているのである。
にもかかわらず、毎年予算に計上される「利払費」には、政府が受け取る膨大な利子収入(インカムゲイン)が考慮されていない。さらに本連載の第1回で触れた通り、債務償還費は実態として支出されていないという指摘すらある。
財政法第14条は「歳入歳出は、すべて、これを予算に計上しなければならない」と規定しており、歳入と歳出を相殺して計上することはできない。これを「総計予算主義」と呼ぶ。しかし、米国債の利息収入などのインカムゲインを別途計上し、ネット(相殺して)で把握すれば実態は大きく変わるはずだ。財務省はいつも、都合のいい支出の「総額」だけを予算化する構造になっていると言わざるを得ない。
いずれにせよ、カネのなかった戦後の困窮期に制定された財政法は、すでに時代の変化から完全に乖離している。第2の予算といわれる「特別会計」にまつわる不透明な実態を含め、真の「財政民主主義」を貫徹するためにも、現行法の抜本的な改正に踏み込むべきではないか。
政府・自民党内には、何をやるにも「財源がない」と繰り返す政治家が未だに多い。彼らもまた、時代に取り残された人たちなのだろう。しかし、財政法という古びた眼鏡を外し、ルールを見直すだけで、日本にはかなりの財源を生み出せるポテンシャルが眠っている。
日本の再生には、あらゆる面での抜本的な見直しが必要だ。時代錯誤の法制度に縛られ続ける時代は、もう終わらせなければならない。(完)
(注)今回の連載(1)(2)(完)で使ったデータの多くは「Gemini」から引用した