日本銀行は15日・16日の両日にわたって開催した金融政策決定会合において、政策金利を0.25%引き上げ、1%とすることを決定しました。政策金利が1%台に乗るのは1995年以来、31年ぶりの高水準です。「31年ぶり」という点に焦点を当てて報じる主要メディアもありますが、金利が1%に達したこと自体に大きな意味はありません。今回の決定の真意を探るならば、円相場が1ドル=160円30銭〜40銭近辺で膠着(こうちゃく)したことにあるでしょう。利上げによる直接的な為替効果は見られませんでした。
今回の0.25%の利上げは事前に予想されていたため、3会合ぶりとなる引き上げにもかかわらず、為替への影響は皆無でした。同時期には、米国とイランが停戦合意書に署名し、原油価格が70ドル台へ急落したことで、ホルムズ海峡の開放の見通しも明るくなりました。これまで日銀は、米国のベッセント財務長官をはじめとする市場関係者から「利上げが遅すぎる」と批判されてきました。
そうした状況を鑑みると、今回は政策金利を引き上げる絶好のタイミングだったと言えます。市場では0.25%の利上げにより1%とする見方が完全に定着していました。もしここで0.50%引き上げて1.25%としていれば、市場にサプライズを与え、円相場が一気に円高へと動いた可能性もあります。
しかし、日銀はその選択をしませんでした。円安や輸入物価の高騰、高止まりするインフレを横目に、頑なに0.25%の利上げに固執したようにも見受けられます。本来、経済・金融政策が直面する最も大きな課題は「インフレの加速」ではないでしょうか。実際、政府はインフレ抑制のために、4月下旬に総額11兆7349億円規模の為替介入(円買い)を実施しています。
政府と日銀は、経済的課題の解決に向けて協力することを国民に約束しています。これは2013年1月に公表された「アコード(共同声明)」に基づくものであり、政権や日銀総裁が代わっても維持されています。しかし現状では、円安防止という最優先課題に対して、このアコードが軽視されているように見えてなりません。
もちろん、政策金利の目的は為替対策だけではありません。物価の安定、雇用の維持、経済成長の推進、国際的な金融市場の安定など、多岐にわたる役割を担っています。とはいえ、最優先課題である円安阻止において政府と日銀が共同歩調を取れていないと見なされれば、投機筋を勢いづかせることになりかねません。
経済政策も金融政策も筋を通すことが肝要です。高市内閣が掲げる「責任ある積極財政」が機能すれば、金利は着実に上昇していくはずです。金利が上がれば通常は円高につながります。しかし、利上げに対する日銀のスタンスが「Too little, too late(少なすぎて、遅すぎる)」となれば、せっかくの機会を失ってしまいます。日銀には、利上げのタイミングだけでなく、利上げ幅を含めた力強い決断が求められています。