FRB(米連邦準備制度理事会)の新議長に就任したケビン・ウォーシュ(Kevin Warsh)氏が18日、FOMC(連邦公開市場委員会)終了後に初めての記者会見を行いました。ロイターの報道によると、今回の会見でウォーシュ氏は、新たな時代の幕開けを強く印象付けました。当局者はインフレ率が目標を大きく上回る中、政策金利の据え置きで一致しましたが、同時にウォーシュ氏はFRBの金融政策運営および情報発信のあり方を抜本的に見直す、野心的な改革への着手を表明しました。

新議長は会見の冒頭で、「物価安定」と「雇用最大化」というFRBの二大責務の達成に全力を注ぐ方針を強調しました。その上で、指導部交代を従来の慣行を見直す好機と捉え、声明文をより短く簡潔なものに変更しました。特に、これまでの議長が重視してきたフォワードガイダンス等の定型文を全面的に削除し、FRBのコミュニケーション改革に取り組む姿勢を明確にしています。

また、改革を推進するため、以下の5つのタスクフォースを設置することも明らかにしました。

(1)コミュニケーション

(2)バランスシート

(3)データソース

(4)生産性と雇用

(5)インフレの枠組み

個人的に特に注目したいのは5番目の「インフレの枠組み」です。インフレの実態は極めて複雑化しており、従来の追跡手法が現在の経済環境において適切かどうか、その検討結果が待たれます。

そもそもトランプ大統領は、利下げ実施への期待を込めてウォーシュ氏を指名しました。しかし、各種メディアの報道を見る限り、新議長のスタンスは、実体経済で芽吹きつつあるインフレを重視しており、結果としてFRBを利上げ方向へ誘導しようとしているように見受けられます。前任のパウエル議長と同様、トランプ大統領との関係が対立的なものになるのか、今後の動向が注目されます。

現時点でトランプ大統領は、声明の簡素化やタスクフォースの設置に対して「それで構わない」と鷹揚な姿勢を見せています。しかし、政策金利の引き上げが現実味を帯びた段階で、批判が始まる可能性も否定できません。金融政策の妥当性と並び、両者の人間関係の行方も気になるところです。

米国経済の先行きを左右するのは金融政策だけではありません。FRBの責務である「雇用最大化」についても、AIの急激な普及により先行きが不透明になっています。FRBは、従来の金利操作だけで雇用市場の健全性を維持できるのでしょうか。時代が大きな転換期にある中、新議長の改革手腕が試されます。

これまでFRBは、フォワードガイダンスや詳細なドットチャートの提示を通じて、市場の安定化を図ってきました。これはある種、市場の期待をコントロールすることで安定を目指す手法であったと言えます。ウォーシュ氏がフォワードガイダンスを削除した理由について、「現在の経済状況には適しておらず、将来の行動をあらかじめ示すことはできない」と述べています。

政治・経済・市民生活が複雑化し、近未来の予測さえ困難な時代において、「幸いなことに、われわれは6週間後に再び会合を開く」(ロイター)という同氏の言葉は、確実なデータに基づいた現実的な対応を優先するという、強い意思表示なのかもしれません。