ネットで読売新聞の世論調査結果(19日~21日実施)を見た。高市内閣の支持率は前回調査に比べて5%上昇し、69%となった。相変わらず高い支持率が続いている。これに異論はないのだが、懸案となっている飲食料品にかかる「実質ゼロ税率」案への支持が「賛成」52%で、「反対」の38%を上回ったとある。消費者の負担は実質ゼロになるわけで、高市総理ならびに自民党が前回の総選挙で掲げた公約通りになる。「実質的に公約が守られるのだからいいではないか」というのが、今回の調査結果に対する国民の心理なのだろう。
しかし、こうした「曖昧な妥協」への支持が、日本のシステム開発ベンダーを甘やかす要因となり、ひいてはIT時代におけるシステム開発の遅れを招き、日本全体の競争力低下に拍車をかけているのではないか。大袈裟に言えば、日本低迷の一因と言っていい。問題は税率そのものではなく、システム開発における先見性や柔軟性の欠如にある。もっと言えば、公開性も共有性も皆無である点だ。幹線道路を企業が勝手に作っているような状態といえる。政府系のシステムこそ、少なくとも標準化すべきではないか。大手スーパーをはじめとするシステム開発業者は、税率ゼロに対応できない現状を猛省すべきだ。
日本のシステム開発(広義の製品開発を含む)は、本来世界をリードできる力を持っている。しかし、「いつでも、どこでも、誰でも簡単に使えて便利」という観点で見ると、国際的な「汎用性」に欠けるという特徴がある。例えば、NTTが開発した「iモード」が好例だ。この優れたシステムは、国際的には全く評価されなかった。iモードは1999年当時、世界最先端のサービスだった。スマートフォン時代より10年以上早く、携帯電話でメール、ニュース、銀行取引、チケット予約などを可能にし、絵文字も生み出した。日本国内では大成功したが、結果として世界標準にはならなかった。
なぜか。iモードはインターネットの技術を利用していたものの、独自のHTML、独自のメールシステム、独自のコンテンツ課金、独自の端末仕様など、日本市場向けに最適化されすぎており、国際的な視点を欠いていた。欧米ではWPA(Wi-Fi Protected Access)など別の規格が進められており、世界共通の標準を作る流れと噛み合わなかったのだ。要するに、「日本国内で通用すれば事足りる」という島国根性が要因だった。つまり、国際性を無視したことが失敗の根本である。
「世界に合わせる」のではなく、「日本で最も便利なもの」を追求した結果が、国際的な競争環境で生き残れなかった原因である。以下は推測だが、スーパーなどで使われているPOS(販売時点情報管理)システムも、iモードの轍を踏んでいるのではないか。POSシステムは、商品の販売と同時に売上データや在庫状況を自動で記録・集計する仕組みだ。単なるレジでの会計処理にとどまらず、「いつ・誰が・何を・いくつ・いくらで」売ったかをリアルタイムで把握し、店舗経営を強力に支援している。
だが、そのシステムが「税率0(ゼロ)」を理解できないという。世界中で使われているPOSシステムがゼロを処理できないケースがあるのか、個人的には知識がない。だが敢えて言いたいのは、数字は0から9までしかないということだ。こんな基本的な設計なのに、ゼロだけを除外しなければならないシステムとは何なのか。そこに大きな疑問を感じる。
飲食料品の税率を協議した国民会議は、システムベンダーの証言を重視した。「改修には1年近い時間がかかります」――おそらく出席したベンダーは同じ主張を繰り返したのだろう。これを受けて小野寺(五典)議長は、「早期実現のために1%税率と1%給付」という修正案を、論拠も示さず提示した。
高市総理は「迅速性と十分性」の兼ね合いだと主張する。政治家というのは、何でも言葉を濁して煙に巻きたがるものだ。簡単に言えば「早く公約を実現すること」を優先したのだろう。これは事実上、小野寺議長の修正案を支持するというアナウンスと受け取れる。
こうして日本のシステム開発に関わる根本的な問題、すなわち国際性・公開性・共有性といった視点がまたしても失われてしまう。iモードと同じ間違いを繰り返しているのではないか。目先に囚われ、システム開発の本質が見失われていく。
「責任ある積極財政」の総投資額は、2040年までの累計で370兆円になるという数字を、主要メディアが先週一斉に報道した。投資額は大きければ大きいほどいいと個人的には考えている。だが、誰も「投資の質」を問わない。そこに大きな落とし穴がなければいいのだが、そんな気がしてならない。