学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題で、27日に証人喚問された佐川宣寿前国税庁長官の証言に、疑問の声が出ている。佐川氏は昨年の国会で「学園との交渉記録は廃棄した」と答弁したが、喚問では一転して「廃棄するというルールを説明しただけ」と主張。改ざん前の文書には交渉の経緯が詳細に記録されており、野党は「明らかな虚偽答弁だ」と強く反発している。【光田宗義】
「私の答弁は財務省の規則を説明したものだ。虚偽という認識はその時なかった」
佐川氏は喚問でこう釈明し、「(記録が存在しているか)きちんと確認せず、丁寧さを欠いた」と陳謝した。これは「省内で決められた保存期間を過ぎれば廃棄する」という規則を答弁しただけだった、という理屈だ。
だが実際の質疑を振り返ると、証言との整合性に疑問が浮かぶ。昨年2月24日の衆院予算委員会で、共産党の宮本岳志氏が「交渉記録は残っているか」と質問。当時の佐川理財局長は「委員からのご依頼で確認した」とわざわざ断ったうえで、「近畿財務局と学園の交渉記録はなかった」と断言していた。
改ざん前の決裁文書には「学園を訪問し、国の貸付料の概算を伝える」などと交渉に関する記録がある。このため、宮本氏は喚問で「きょうの証言が偽証か、昨年の答弁が虚偽だ」と迫ったが、佐川氏は「確認したと言ったのは、(記録の有無ではなく)理財局に規則を確認したということだ」と強弁した。
28日の参院予算委でも共産の小池晃書記局長が、昨年3月1、2両日に「2015年1月9日に学園と交渉したか」と6回質問した際、佐川氏は記録の存在を否定したと追及。太田充理財局長は、文書と正反対の答弁が行われた理由を「調査している」と述べた。
さらに「事前の価格交渉はなかった」という昨年の答弁も野党は疑問視する。佐川氏は喚問で、公示地価など「オープンな話をすることはある」と軌道修正。ただし最終的な不動産鑑定価格は伝えていないとして「昨年の答弁は正しかった」と訴えた。
しかし当時のやり取りを記録した音声データでは、「ゼロ円に近い形で払い下げ」を求める籠池泰典被告に対し、「ゼロに近い額まで努力するが、1億3000万円を下回る額はない」と政府職員が回答。改ざん前の文書にも交渉をうかがわせる記述は多く、一般論を話しただけ、という佐川氏の釈明ぶりは説得力に欠ける。
答弁が「丁寧さを欠いた」のは国会の質問が殺到して多忙だったためだと、佐川氏は証言している。28日の参院予算委では、自民党の丸川珠代氏が「職員に休みも取ってもらうのが重要」と財務省の働き方改革を提案し、佐川氏の釈明を援護する場面もあった。