• マネクスの勝屋氏が社長に就任、和田・大塚氏は退任-完全子会社化
  • 「仮想通貨は大変重要な資産クラスになる」とマネクスGの松本社長
Coincheck Inc. signage in Japanese characters is displayed outside the company’s headquarters in Tokyo, Japan.Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

ネット証券大手のマネックスグループは5日、仮想通貨交換業者のコインチェック(東京・渋谷)を36億円で買収すると発表した。巨額の仮想通貨流出を起こしたコインチェックの経営再建に向け、セキュリティーの強化やガバナンス(企業統治)の再構築を急ぐ。

発表によると、4月16日に全株式を取得して完全子会社化する予定。今後3年間は当期利益の2分の1を上限に既存株主に支払う条件も盛り込んだ。マネックス常務の勝屋敏彦氏が社長に就任。同社の松本大社長や、ガバナンスに詳しい久保利英明弁護士らも取締役に就く。コインチェックの和田晃一良社長と大塚雄介取締役最高執行責任者(COO)は退任し、執行役員となる。

コインチェックは1月下旬に不正アクセスを受け約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出。金融庁は2度にわたり資金決済法に基づく業務改善命令を出していた。マネックスは個人投資家向け業務を拡大するため、昨秋にIT技術の強化や仮想通貨事業への参入方針を打ち出したが、今回の買収で動きを加速する。

発表資料の中で初めて示したコインチェックの財務内容は、2017年3月期の売上高は前の期比9.1倍の772億円、営業利益は7億8600万円。17年3月期末の純資産は5億4000万円。18年3月期末(流失ネム補償後)もこれを下回ることはないとしている。マネクスG株は20%高の480円とストップ高で6日の取引を終了した。

「重要な資産クラスに」

マネックスの松本社長は会見で、「サービスの全面再開と業者登録は2カ月程度が目標」とし、コインチェックのブランドは残し将来は株式新規公開(IPO)を目指す考えも示した。自らも3年前から同社の利用者でネット空間から仮想通貨を掘り当てるマイニングも試みたと明かし、「大変重要な資産クラスになる」と見通した。

ネム流出やそれに伴う他の仮想通貨の取引停止により、コインチェックの一部顧客からは損害賠償を請求する集団訴訟などが提起されている。一方、金融庁は6日午後、利用者からの預かり金を経費支払いに流用したなどとしてみなし交換業者のFSHOなど3社を行政処分した。コインチェックの登録審査は継続する。

松本氏はコインチェックの買収について、「何か特別なリスクが潜んでいるとは思っていない」と述べた。社長に就任する勝屋氏は「顧客の信用を取り戻し、信頼を受ける企業にしたい。業界をリードし、貢献していきたい」と述べ、証券に仮想通貨を加えたネット金融機関としての収益力強化に意欲を見せた。