高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)は26日、新型の加速器「スーパーKEKB」で、ほぼ光の速さに加速した電子と陽電子が衝突に成功した、と発表した。2008年のノーベル物理学賞につながった「小林・益川理論」では十分説明できない、宇宙誕生後に消えた反物質の謎の解明につながるという。
スーパーKEKBは、電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生直後の状態を再現するために作られた加速器。高エネ研の地下11メートル、1周3キロの円形トンネル内に設置され、3月下旬に本格稼働を始めた。
高エネ研によると、26日午前0時38分、電子と陽電子の衝突を初観測し、実験が順調に進んでいることを確認した。今後、電子と陽電子が衝突する頻度を、前身の加速器「KEKB」の40倍まで高めるという。
小林誠、益川敏英両氏は1973年、宇宙の誕生後に生まれた物質と、電気的に反対の「反物質」の壊れやすさに差があることを理論的に予言。KEKBを使った実験で実証され、2008年のノーベル物理学賞につながった。だが両氏の理論では、反物質の消滅を完全には説明できず、解明するには、より多くの衝突を繰り返してデータを集める必要がある。(杉本崇)