現預金と有価証券の合計額から有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」が潤沢な企業は? 与信管理を手掛けるリスクモンスターの調査によると、1位は化学メーカーの信越化学工業(東京都千代田区)の8389億円だった。同社は2年連続のトップで、2017年の調査から約1000億円増加していた。
■製造業が好調、ソニーが大幅ランクアップ
2位は任天堂(7445億円)。リスクモンスターは「上位2社のネットキャッシュ額は保険会社と同等であり、その資金力の豊富さが確認できる」と分析する。
3位はSUBARU(6791億円)。13~16年にかけて1位だったファナックは、17年からワンランク下げて4位(6023億円)だった。「ファナックは株主に大幅な利益還元を行う方針に転換した影響でネットキャッシュが減っている」という。
5位以下は三菱自動車工業(5453億円)、空気圧制御システムメーカーのSMC(4999億円)、大成建設(4435億円)、キーエンス(4376億円)、京セラ(3952億円)、セブン&アイ・ホールディングス(3337億円)--と続いた。
11位以下も含めると、上位20社のうち11社を製造業が占めており、「(大手製造業者の)ネットキャッシュの潤沢度合いがうかがえる結果となった」という。
中でもソニーは、前回調査時(17年)のネットキャッシュは2393億円の赤字だったが、一部事業を他社に売却したことなどで18年は4805億円増の2412億円となり、2736位から17位に大きくランクアップした。
■「営業キャッシュフロー」も調査
リスクモンスターは、商品の販売・サービスの提供といった本業によって、企業が1年間に創出した資金を指す「営業キャッシュフロー」も調査した。
1位はトヨタ自動車(4兆2100億円)、2位は日本電信電話(NTT、2兆6375億円)となり、ネットキャッシュの順位とは違った結果に。「獲得した資金を株主還元や投資活動などに回しているため、ネットキャッシュのランキングでは上位に現れていないようだ」という。
3位はNTTドコモ(1兆5115億円)、4位はソニー(1兆2549億円)。「ソニーは、近年の好調な業績推移もネットキャッシュ増加に影響した」とみている。
5位以下は、日産自動車(1兆712億円)、東京電力ホールディングス(7521億円)、東日本旅客鉄道(JR東日本、7041億円)、関西電力(6232億円)、東海旅客鉄道(JR東海、6095億円)、キヤノン(5905億円)--と続いた。
調査は、決算短信を作成・提出している2883社を対象に実施。18年6月18日時点で各社が開示している、17年4月期以降の最新の決算データを分析した。ネットキャッシュは、「現預金-(短期借入金+長期借入金+社債+1年以内返済の長期借入金+1年以内償還の社債+割引手形)」の計算式で算出した。
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