政府の批判を続けていたジャーナリストがトルコにあるサウジアラビア総領事館で死亡した事件で、ロイター通信は、サウジアラビア政府高官の話として、連行すると脅されたジャーナリストが騒いだため容疑者らに首を絞められて死亡したとする新たな説明を伝えました。
サウジアラビア政府は20日、それまでの説明を翻す形で、政府を批判してきたジャーナリストのジャマル・カショギ氏が、トルコにあるサウジアラビア総領事館で殴り合いの末、死亡し、18人の容疑者を逮捕したと発表しました。
事件の経緯について、不透明な部分が多いとの指摘が国際社会から相次ぐ中、ロイター通信は21日、サウジアラビアの政府高官の話として、カショギ氏の死亡の経緯に関する新たな説明を伝えました。
政府高官の説明によりますと、カショギ氏は、「薬物を投与して無理やり連れて行く」と脅されたところ、声を出して騒いだため、容疑者らに首を絞められて死亡したということです。
こうした説明を裏付けるためにもカショギ氏の遺体の発見が鍵となりますが、ロイター通信などは、遺体は敷物で包まれて総領事館の車で運び出されたあと、処理を依頼した地元の協力者に渡されたと伝えています。
一方、トルコのエルドアン大統領は21日、「23日に事件の詳細を説明する」と発言しました。サウジアラビア側の説明にない事実が明らかになるのか注目が集まりそうです。
仏独英外相が共同声明
声明では、「殺害を正当化するものは一切なく、最も強いことばで非難する。表現の自由や報道の自由を守ることはわれわれにとって極めて重要な優先事項であり、いかなる状況下であっても、ジャーナリストを脅し、攻撃し、殺害することは受け入れられない」として、カショギ氏の殺害を強く非難しています。
そのうえで、「責任の所在が明確になるまで徹底的な調査を求めるとともに、今回の犯罪に対して法の適正な手続きがとられることを求める」として、サウジアラビア当局に対して、事件の真相を解明し、法にのっとって関係者を処罰するよう求めています。
サウジアラビア外相「皇太子は知らなかった」
その一方で、事件の関係者については「ムハンマド皇太子に近い人物はおらず、皇太子は否定したし、知らなかった。情報機関の指導部さえ知らなかった。みずからの権限を越えて行動した者がいて、過ちを犯した」と述べ、ムハンマド皇太子は事件にかかわっておらず、一部の者による行為だったという認識を強調しました。
また、ジュベイル外相は、アメリカとの関係について「両国の関係は、イランの攻撃的な政策を封じ込めることなど、お互いにとって戦略的に非常に重要だ。真相が明らかになれば、両国の関係はこれを乗り越えることができる」と述べ、今回の事件でアメリカとの関係が悪化することを望まないという考えを示しました。
独 サウジへの武器輸出当面見合わせ
ドイツ政府は先月、4億1600万ユーロ(約500億円)に上るサウジアラビアへのことしの武器輸出を許可していました。
ドイツのメディアによりますと、過去にドイツからサウジアラビアに輸出された武器のほとんどは巡視船で、サウジアラビアへの武器輸出の額は、アメリカ、イギリス、フランスに次いでドイツが4番目に大きいということです。
メルケル首相はまた、事件について「最も強い言葉で非難する。何が起きたのか明らかにする必要がある」と述べ、サウジアラビア当局に対し改めて事件の真相解明を求めました。