共和党は現在、議席数435の下院で半数を23上回る議席を擁しており、議席数100で半数を2上回っている上院よりもはるかに大きな差を民主党につけている。だが、現職の候補者がいない選挙区が1930年以降で最多の41区ある下院の方が、不利な選挙戦とみられている。
各州から2議員が選出される上院は、共和党の重要支持基盤である農村部の有権者の声がより大きく反映される仕組みになっている。民主党は、トランプ氏が2016年の大統領選で勝利または大勝した州で10議席を守ろうとしているが、状況は共和党に有利とみられている。
フロリダ大学のデータによると、一部の州では期日前投票が異例の伸びを見せている。
<両党の争点は>
民主党は選挙戦終盤で、オバマ前政権が推進した医療保険制度改革(オバマケア)を維持し、既往症がある人の保険加入を守ることに主張を集約させている。
共和党は、トランプ政権2人目の最高裁判事としてブレット・カバノー氏が最近承認され、最高裁で保守派が5対4と優勢を固めたことを宣伝している。トランプ氏は、中米から米国入りを目指して北上している数千人規模の移民集団(キャラバン)も含めた移民問題も集中的に取り上げている。
<なぜ上院は共和党優勢なのか>
2014年まで上院を支配していた民主党は、ウエストバージニア、インディアナ、ノースダコタ、モンタナ、ミズーリの5州で現職の議席を守ろうと、多額の選挙資金を投じている。これらの州は2016年にトランプ氏が勝利しているが、このうち1議席でも失えば、民主党が上院で過半数を奪還する可能性はほぼなくなる。
世論調査によると、インディアナとミズーリの両州は五分五分の情勢。トランプ氏が20ポイントの差をつけて勝利したモンタナ州では、現職の民主党ジョン・テスター議員が共和党候補に4ポイント以上の差をつけている。トランプ氏が40ポイント以上の差をつけて圧勝したウエストバージニア州では、民主党のジョー・マンチン議員が16ポイント差でリードしている。
だがノースダコタ州では、民主党のハイディ・ハイトカンプ議員が共和党挑戦者のケビン・クレイマー下院議員に大きくリードを許している。
共和党側は、米移民税関捜査局(ICE)の廃止を求める一部の民主党候補者の訴えや、数十年前のセクシャルハラスメント疑惑が浮上したカバノー氏の最高裁判事指名に抗議するワシントンでのデモ活動などを批判し、争点化しようとしている。
民主党は、前出5州の防衛に全力を挙げる一方で、フロリダ、アリゾナ、ネバダの3州の選挙戦にも注力している。3州のいずれかで議席を取れれば、民主党には重要な勝利となるとストラテジストは指摘する。
<選挙資金の規模は>
今回の選挙への関心を測る方法の1つに、選挙資金がある。ロイターが選挙資金報告などを分析したところ、今年の連邦議会選の選挙資金は、大統領選が行われない中間選挙として過去最高となるペースだ。
民主党は、共和党よりも巨額の選挙資金を集めている。民主党の上院議員候補者は5億5100万ドル(約620億円)超、共和党の同候補者は3億6800万ドル以上を集めた。下院の民主党候補者は6億8000万ドル以上、共和党候補は5億4000万ドル以上だった。
上下両院で集められた選挙資金の合計は、2010年中間選挙の同時期の数字を上回っている。
<下院で優勢なのは>
民主党は、共和党が自分たちに有利になるよう区割りを変更した「ゲリマンダー」がもたらした不利な状況を乗り越えて勝利することを願っている。争われている議席の多くは、トランプ氏が2016年に勝利できなかった都市部や郊外の選挙区だ。
民主党の独自調査によると、今回の選挙で民主党にとって有効な攻撃材料となるのは、ヘルスケア問題や、一部の有権者が富裕層や企業に対する特典とみなしている共和党減税だ。ヘルスケアは、過去8年間に何度もオバマケア撤回を可決してきた下院では、特に重要な争点となっている。
共和党側は、減税への取り組みや好調な経済を強調している。
激戦となっている上院や下院の選挙区では、トランプ氏支持を明確にして同氏の支持基盤に訴えようとしている共和党候補者が、特定の支持政党を持たない有権者からの支持集めに苦戦している。民主党下院選挙対策委員会(DCCC)の元広報担当者ダグ・ソーネル氏はこう指摘する。
「共和党候補者にほとんど選択肢はない。トランプ氏を支持しなければ、結果が出ない。だがトランプ氏を支持すれば、支持を得なければいけない多数の有権者に幻滅されてしまう」
(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)