トランプ大統領は先週末、12月末に退任するケリー大統領首席補佐官の後任に行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー局長(51)を充てる人事を決めた。大統領首席補佐官というのは日本流に言えば官房長官のような存在だろう。大統領の意を受けてホワイトハウスにとどまらず議会や大臣、官僚との政策のすり合わせ、外国政府との水面下での調整など、政権の屋台骨を支える極めて重要なポストである。トランプ氏という“異能”な大統領に仕える主席補佐官は大変だと思う。マルバニー氏で3人目だ。最重要ポストに適材が見当たらない。いたとしても当人が就任を拒絶する。トランプ政権にとって最大のウィークポイントだ。そのポストが今度は「代行」だという。その意味がよくわからない。

日経新聞は「トランプ氏の希望で『代行』の肩書をつけたが任期に期限はないという」と伝聞調で伝えている。普通に考えれば代行は正式な主席補佐官が決まるまで職務を代行する人という意味だろう。だから任期は正式な補佐官が就任するまでとなる。ところが今回は代行ではあるが、任期はないという。よくわからない大統領のよくわからない人事だ。今回の人事は人選が難航した。トランプ大統領の意中の人はことごとく就任を拒否。難航との報道に大統領は「なりたい人は一杯いる」と虚勢を張っていた。邪推するに代行にしておけば意中の人が見つかった時いつでも交代できる。トランプ大統領のずる賢いやり方だ。代行ならないものもあるように見せられるとの魂胆だろう。だとすれば、これを称して無意味という。

メディアも代行の意味を読者にはっきりと伝えていない気がする。時事通信によると背景には、相次ぐ混乱やスキャンダルに対処し、「管理されることを嫌う大統領」(米メディア)を管理しなければならないという、トランプ政権特有の事情があるという。マルバニー氏が正規の首席補佐官でなく代行となる背景について、識者からは「(トランプ氏が条件に求めた)2020年大統領選まで務めたがらなかったのだろう」(USAトゥデー紙)という見方が出ているとある。この説に従えば、マルバニー氏が代行を欲したことになる。いずれにせよ、大統領の側近中の側近がすんなり決まらないトランプ政権、誰が見ても異常である。異常な政権が再選に向けて残りの任期を選挙活動に専念する。異常が続けば異常を異常と感じなるくなる。そのことがより一層異常を助長するのかもしれない。