[マドリード/パリ/ブリュッセル/オタワ 4日 ロイター] – 欧州主要国は4日、ベネズエラの野党指導者フアン・グアイド国会議長を同国の「暫定大統領」として承認した。
スペイン、オーストリア、英国、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、ポーランド、ポルトガル、スウェーデンの11カ国が承認。
スペインのサンチェス首相は声明で「グアイド国会議長を暫定大統領と認定する」と表明し、可能な限り早期の自由で公正な選挙をもとめた。
グアイド暫定大統領の承認は欧州連合(EU)がマドゥロ政権に選挙のやり直しを求めていた8日間の期限が切れたことに伴う措置で、米政府の方針に足並みをそろえることになる。
ただ、ベネズエラに巨額の投資や借款を行っているロシアや中国はこうした動きを内政干渉と批判し、マドゥロ大統領への支持を表明しており、ベネズエラを巡る情勢は混迷を極めている。
欧州議会は1月31日に行った採決でグアイド氏を暫定大統領として承認。EUは声明草案で、EUとしてグアイド氏を暫定大統領として「認識」するが、正式に承認するかどうかは加盟各国が決めるとの立場を示していた。
ベネズエラでは、マドゥロ大統領が強権的な手法で再選を果たし大統領に就任。これに反発し、野党指導者のグアイド国会議長が暫定大統領就任を宣言するという異常な事態に陥っている。トランプ米大統領は直ちにグアイド暫定大統領を承認したが、EU諸国はグアイド氏に対する支持を表明するにあたり、米国より慎重な姿勢を示していた。
英国のハント外相は、「マドゥロ氏はわれわれが設定した8日間の期限内に大統領選挙実施を表明しなかった。したがって英国は他の欧州諸国と同調し、信頼できる選挙が実施されるまで、グアイド国会議長を暫定大統領と認定する」とツイッターに投稿した。
フランスのルドリアン外相は国内ラジオに対し、グアイド氏が大統領選挙を実施する「資格と正当性」を有すると指摘。今後、ベネズエラ情勢について欧州諸国と協議する方針を示し、同国での対立が平和的に解消し、内戦を回避しなければならないと述べた。
この日の欧州主要国の動きを受け、ベネズエラのマドゥロ大統領は欧州との関係を見直すと反発。スペインを槍玉に挙げ、「クーデターが起こり、西側諸国が軍事介入に動けば、サンチェス首相よ、あなたの手は血で汚れることになる」と批判した。
ポンペオ米国務長官は声明で、EUによるグアイド氏の暫定大統領承認を歓迎するとし、他国の追随を促すとの認識を示した。
ロシアは欧州諸国が干渉しているとして非難。ペスコフ大統領報道官は記者団に対し「ある種の決定の強要、もしくは権力奪回の動きを正当化しようとする試みは、直接的、関節的な干渉にほかならない」と述べた。
外交筋によると、イタリアはEUが声明草案で示した見解に反対を表明。ブリュッセルを訪れているアイルランド外相も「ベネズエラ国民が民主的な決定を行えるよう、自由で公平な選挙が実施されることを望んでいる」と述べ、アイルランドはイタリアと同様にグアイド氏の暫定大統領承認に反対する姿勢を示した。
EU非加盟国のノルウェーもグアイド氏を暫定大統領として承認しない方針を表明している。
こうした中、 中南米14カ国で構成する「リマグループ」とカナダは会合を開き、ベネズエラ問題への対応を巡り協議した。関係筋によると、米政府はベネズエラ産原油の輸入禁を提案していたものの、同グループは追加制裁の導入は見送る見通し。
リマグループを構成する大半の国が、マドゥロ大統領退陣と選挙のやり直しを支持しているが、メキシコは退陣に向けた措置を講じることに反対を表明しており、コンセンサスの形成は難しいもよう。
カナダのトルドー首相はベネズエラの人道危機に対処するため5300万カナダドル(4030万米ドル)を拠出する方針を明らかにした。