【北京時事】中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)で15日、外国企業の権益保護強化をうたった外商投資法が異例の速さで成立した。背景には、米中貿易協議で交渉を有利に進めたい習近平指導部の思惑がある。ただ、実効性を疑問視する声もくすぶっており、中国側の切り札になるかは不透明だ。
外商投資法は、行政機関による外国企業を対象とした技術移転の強要禁止を盛り込んだほか、知的財産権の侵害行為に対する法的責任の追及が採決の直前に加えられるなど、米国の要求に沿った内容となった。大詰めを迎えた対米協議への配慮がうかがえる。
一方、「国は自由意思の原則や商業ルールにのっとった技術提携を奨励する」として、民間ベースでの技術移転を引き続き要請している。これが強要禁止の抜け穴となる可能性も残されている。
同法は2015年に公表された外国投資法案(全170条)を下敷きに、条文を4分の1に減らして策定。昨年12月下旬の本格審議入りから3カ月足らずで成立にこぎ着けた。国内景気に悪影響を与えている米中摩擦の早期解決を図り、経済対策に本腰を入れたい中国側の焦りも見える。
ただ、法制化を急ぐあまり、条文は「原則を羅列しただけ」(専門家)となり、対米協議をにらんだ急ごしらえの感は否めない。来年1月の施行に向け、今後は細則の整備が焦点となるが、米国は中国に構造改革を順守させる仕組みづくりを求めており、厳しい要求が続く可能性もある。(2019/03/16-07:32)