【ソウル=水野祥】韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に韓国人元徴用工への賠償を命じた訴訟で、原告代理人は26日、差し押さえた韓国内の新日鉄住金の資産について、現金化するための売却命令の申請を先送りすると発表した。
原告側は2月、新日鉄住金が賠償協議に応じなかったとして、売却命令の手続きに入ると表明していた。しかし原告側はあくまでも協議による解決を目指すとしており、企業に実害が出る現金化の手続きを延期し、再び企業に協議に応じるよう要求した。
ただ、日本政府が対抗措置を検討していることについて、原告代理人は書面で「韓国司法への不当介入で、被害者に対する追加的な権利侵害にあたる」と批判し、国連など国際社会に問題を提起する姿勢を示した。
また原告側は、今年1月に続いて新日鉄住金の資産を追加で差し押さえたことを明らかにした。対象は韓国の鉄鋼大手ポスコとの合弁会社「PNR」の株式で、1月分と合わせ計約9400万円相当の株式を差し押さえたことになる。
代理人によると、2審で賠償を命じられた機械メーカー・不二越についても、原告のうち23人の申請を受け、蔚山ウルサン地裁が資産の仮差し押さえを認めた。不二越が所有する韓国企業との合弁会社の約7400万円相当の株式が対象だ。元徴用工や元挺身隊員らの訴訟を巡り、日本企業が資産を差し押さえられるのは3社目となった。