国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ギータ・ゴピナート氏が「現代金融理論(MMT)」の信奉者に伝えたいのは、フリーランチを期待するなというメッセージだ。

  ゴピナート氏は9日、世界経済見通し(WEO)の発表を受けてワシントンで記者会見し、「財政政策は当局者にとって極めて重要な政策手段の一部だ」と指摘。その上で、「そうは言ってもフリーランチはない。各国が支出できる規模には限界がある」と語った。

Harvard Professor Gita Gopinath Interview
ギータ・ゴピナート氏Photographer: Anindito Mukherjee/Bloomberg

  MMTはこうした限界に関する議論の転換を図るものだが、ゴピナート氏は有力エコノミストの1人としてMMTを巡る論争に新たに加わった形となる。米国や日本などのように、中央銀行を持ち、自国通貨で借金する国は破産することはなく、高インフレを招かない限り、支出のし過ぎを心配する必要はないというのがMMTの趣旨だ。

  ウォール街や学界の重鎮はMMTを相次ぎ批判。ハーバード大学教授のサマーズ元財務長官は「重層的な誤り」を指摘し、米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は「くず」だと一蹴した。

  MMTが活発に議論されている背景には、先進国が景気悪化の際にどのように対応するかや、中銀による利下げ余地が限られる中で財政政策が主導的な役割を果たす必要があるかどうかについて、関心が広がっている事情がある。

  ゴピナート氏は、多くの国が貨幣発行によって財政赤字の穴埋めに努めてきた経緯に言及。「インフレを制御できなくなり、投資や成長の落ち込みという結果に終わるのが通常のケースであることが過去の事例で明らかだ」と論評した。

原題:Top IMF Economist Says No Free Lunch From Modern Monetary Theory(抜粋)