20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は9日、開発途上国向け融資について、返済可能な範囲にとどめる「質の高いインフラ投資」を原則とすることで合意した。「債務のわな」と呼ばれる途上国への過剰融資が問題視されてきた中国にクギを刺すのが狙いだ。制約を課されることに難色を示してきた同国も「世界の厳しい目」(日本の財務省幹部)を無視できず、受け入れた。ただ、中国は依然として融資実態を公表しておらず、改善には程遠い。
G20「貿易摩擦に対処必要」=反保護主義は明記せず-貿易相会合声明
麻生太郎財務相は会議終了後の議長国会見で、「4年前に日本がインフラ(投資)の質という話を主張し始め、今回文書に盛り込むことができた」と胸を張った。米中貿易摩擦の激化で協調姿勢を打ち出しにくい中、原則の採択は大きな成果だと誇示した。
背景には、中国がシルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環として途上国に融資した金額が返済困難な規模に膨らみ、問題となっていることがある。港湾や鉄道などのインフラ整備は、途上国の経済発展に不可欠。同国がスリランカの港湾建設に対し高金利で融資し、返済不能になると、99年間の運営権を手にしたことなどが国際的に非難の的となった。
一方、各国は今回の会議で、融資実態が適切かどうかをめぐり、自主点検結果を報告することになっていたが、焦点の中国は提出を見送った。この問題の解決には「どこがいくら貸し付けたか透明性を確保することが不可欠」(元財務省高官)だが、途上国融資の実態はいまだに全容が分からない。日本などは今後も、中国に融資実態を明らかにするよう迫る考えだ。