衆院財務金融委員会の冒頭で、金融庁の審議会が出した「老後資金2000万円問題」の報告書について謝罪する金融庁・三井秀範企画市場局長=14日午後(春名中撮影)
衆院財務金融委員会の冒頭で、金融庁の審議会が出した「老後資金2000万円問題」の報告書について謝罪する金融庁・三井秀範企画市場局長=14日午後(春名中撮影)

 衆院財務金融委員会は14日、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要とした金融庁金融審議会の報告書をめぐって議論し、金融庁幹部が「世間に著しい誤解や不安を与えた」と謝罪した。夏の参院選への影響を懸念する政府・与党は収束を急ぐ。一方、野党は麻生太郎金融担当相が報告書を受け取らない考えを示したことを「選挙向けの隠蔽(いんぺい)」などと批判し、争点化に躍起になっている。

 審議の冒頭、金融庁の三井秀範企画市場局長は、報告書が批判を招いたことに関し「配慮を欠いた対応でこのような事態を招いたことを反省するとともに深くおわびする」と述べた。

 麻生氏は、すでに正式な報告書として受け取らない方針を表明した。14日も「(報告書は)公的年金だけでは月5万円足りないとしたが、年金は老後の生活をまかなう柱という政府のスタンスと違う」と述べ「政策遂行の参考になることはない」と強調した。

 これに対し、野党は「前代未聞の隠蔽工作だ」(立憲民主党会派の大串博志氏)、「選挙に不利かもしれないから受け取らないと言い始めたのではないか」(共産党の宮本徹氏)などと政府の対応を追及した。

 第1次安倍晋三政権だった平成19年の参院選では、「消えた年金問題」の影響で与党が大敗した。野党は今回も「年金問題」を攻撃材料にする思惑がある。

 ただ、金融庁は報告書について、公的年金制度を議論していないとして「(年金)制度の限界を指摘するものではない」と否定した。野党側も、大串氏が麻生氏に年金を受給しているかどうか尋ねるなど揚げ足取りに終始し、議論は深まらなかった。

 野党側は首相が出席する予算委員会の集中審議を求めているが、与党側は拒否する構えだ。(田村龍彦)