【カイロ時事】飛来物で被弾したのか、それとも何者かが仕掛けた爆弾か-。中東のホルムズ海峡近くで起きた日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻への攻撃では、攻撃主体やその方法をめぐる謎が深まっている。国連などが求める公正で独立した調査のめどは立たず、真相の解明は難航が必至。「イランの仕業」と断定する米国に対し、関与を否定するイランも反証は挙げておらず、両国を中心に情報戦が激化しそうだ。
◇革命防衛隊が関与?
米中央軍が攻撃後に撮影した国華産業(東京都千代田区)運航のタンカーの画像では、海面から上の船体部分が2カ所損壊している。中央軍は13日の声明で「リムペットマイン」と呼ばれる爆弾による攻撃と断定。イランの精鋭部隊「革命防衛隊」の巡視艇が攻撃後にタンカーに接近し、爆発せずに船体に残ったリムペットマインを除去したとする動画も公表した。
リムペットマインは船体に磁力で吸着させる爆弾。通常は船を沈没させるほどの威力はないが、船体を損壊して航行不能にできるため、破壊工作活動に使われることも多いとされる。
5月にアラブ首長国連邦(UAE)沖でサウジアラビアなどのタンカー4隻が受けた「妨害攻撃」でも、UAEやサウジ、ノルウェーが行った予備調査はリムペットマインが使われた可能性を指摘した。米国は、この攻撃にイランが関与したと見ており、類似点などを勘案して今回の「イラン犯行説」を強く主張している。
◇物証開示が焦点
ただ、米国が公表した動画は夜間の撮影とみられ、不鮮明な点も多い。イランの攻撃を裏付けるには説得力に乏しく、イランに詳しい専門家からも「決定的な証拠にはならない」と慎重な見方が出ている。詳細の特定が難しいこともあり、イラン側も「米国は事実や状況証拠もないまま、イランに嫌疑を掛けている」(ザリフ外相)と批判を強める。
一方、国華産業は、船体の損壊部が海面よりかなり上にあるため「魚雷や機雷による攻撃の可能性はない」と主張。フィリピン人乗組員の目撃情報から「何かが飛んできて爆発した」との見立てを崩していない。ただ、根拠は主に乗組員の証言のみで、砲弾の残骸などは確認されていない。
シャナハン米国防長官代行は14日、「米国が情報の機密を解除すれば、より多くの情報を共有できる」と語った。今後、どれだけ確度の高い物証が開示されるかが焦点となるが、米国にとって都合の良い情報だけが公表される可能性も排除できない。