今朝の朝日新聞(Web版)に「消費増税は無期限延期を、元IMF幹部が異例の反対論」と題する記事が載っている。国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めた、オリビエ・ブランシャール氏を引き合いに出し、財政出動を訴える論調が増えている背景を紐解こうとする記事だ。IMFはEU同様財政再建を積極的に推進している機関だ。この記事によるとブランシャール氏は「2008年のリーマン・ショック後、IMFのチーフエコノミストを長く務め、危機の収拾に当たった。財政健全化の旗を振るIMF出身で、マクロ経済学の大家としても知られる」という。いかにも財政健全派の有力者にみえる。その人が10月に予定する消費増税に反対する姿勢を示したというのだ。
かねてから消費税率の引き上げに異を唱えてきた一人として、ブランシャール氏の発言に意を強くしている。個人的には財政健全化を否定しているわけではないが、現状の日本経済はそれ以上に大事な問題が無視されているような気がしてならない。バブル崩壊後の失われた20年を経ても日本経済は長期停滞からいまだに抜け出せず、格差は拡大する一方である。物価が上がらないとはいえ、賃金はその物価を大きく下回っている。日銀が異次元緩和で金利をゼロ近辺に抑えていても、一般庶民の生活は一向によくならない。非正規雇用が増え、中高年の引きこもりや、メンタル系の障害者の数は増える一方だ。犯罪も増えているような気がする。こんな状況で消費税を引き上げれば弱者の生活はますます苦しくなるだろう。それでも財務省ならびに財政健全化は消費増税が必要だという。
ブランシャール氏は「消費増税を実施すれば不況になるかもしれない一方、債務残高のGDPに対する比率は大して改善しない。日本銀行の金融政策ももう使えない」と指摘する。そして「私なら期限を定めず延期して、『引き上げられる時期が来たら直ちに引き上げる』と言うだろう」と述べている。同感だが、「延期」ではダメで「撤廃」すべきだと個人的には思う。そんな反対論に意を介することもなく安倍政権は、既定方針通り消費増税を実施することを決めたようである。9月まで駆け込み需要が出てきて景気はそれなりに維持されるだろう。だが、10月以降日本の景気がどうなるか自信を持って答えられる人はいないだろう。それにしても健全財政化の旗振り役だった朝日新聞がこのところ、MMTをはじめ財政出動に理解を示すような記事が増えているのはどうしてだろう。こちらも少し気になる。