【マイアミ(米)時事】来年秋の米大統領選に向けた民主党の初の候補者討論会が26日(日本時間27日)、フロリダ州マイアミで2日間の日程で始まった。支持率で上位2人を追い上げるウォーレン上院議員は、全国民に公的医療保険を拡充する急進的な政策をアピール。他の候補も移民問題などで存在感を示そうと躍起になった。
「『不可能だ』と言う政治家は単に戦おうとしていない。公的医療という基礎的な人間の権利のために私は戦う」
ウォーレン氏がひときわ喝采を浴びたのは、同氏が主張するメディケア・フォー・オール(国民皆保険)の実現性に他の候補者が疑問を呈した場面だった。
ウォーレン氏やサンダース上院議員が提唱する国民皆保険は、民間保険を廃止して全て公的保険に吸収する急進的な案。討論会では、ブッカー上院議員も賛意を示し、「保険会社や製薬会社は米国人の痛みを食い物にしている。(公的医療は)米国人の権利であるべきだ」と訴えた。
公的保険が高齢者や貧困層に限られる米国では、1人当たりの医療費が日本の倍以上の1万ドル(約108万円)に上り、無保険の国民も1割を超えて深刻化している。討論会を見に来た23歳の女子学生は「大学院に行くつもりだが授業料が高く、保険に入る余裕がない」と窮状を明かした。
ただ、全て公的保険で賄うには、政府の年間歳入に匹敵する3兆ドル(約320兆円)の財源が必要との試算もある。討論会では、穏健派のクロブシャー上院議員が「多くの人は会社を通じて加入する民間保険に満足している」と慎重な考えを示したものの、財源の問題をめぐって議論は深まらなかった。
この日、ウォーレン氏と並ぶ討論の「勝者」(米メディア)と評価されたのが、オバマ政権で住宅都市開発長官を務めたカストロ氏だ。支持率1%以下の同氏は、不法移民の収監を認める法律の廃止を主張。オルーク元下院議員に向かって、「ここにいる何人かの候補者は廃止を訴えてきたが、オルーク氏は違う。私はそんな候補者と戦う」と挑発し、見せ場をつくった。