[ワシントン 28日 ロイター] – 米商務省が28日発表した5月の個人消費支出(季節調整済み)は前月比0.4%増と緩やかに伸び、市場予想と一致した。個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.2%上昇と、小幅な伸びだった。経済が鈍化していることや物価上昇圧力が弱いことを示し、米連邦準備理事会(FRB)が7月に利下げする材料となる可能性がある。 

4月の消費支出は当初発表の0.3%増から0.6%増へ上方改定された。個人消費支出の前月比の内訳は、モノが0.5%増。自動車などの耐久財が1.7%増加した。サービスは0.4%増だった。 

5月のインフレ調整後の実質消費支出は2カ月連続で前月比0.2%増だった。ここ2カ月間の伸び率を見る限り、個人消費は第1・四半期に急減速した後、持ち直しに苦戦していることがうかがえる。 

第1・四半期の個人消費支出は年率で0.9%増と、1年ぶりの弱い伸びとなった。輸出と在庫、そして高速道路や防衛への政府支出が寄与し第1・四半期GDPは3.1%増だった。 

PCE価格指数は、食品が0.3%上昇する一方、ガソリンやその他のエネルギー商品が0.6%低下した。4月のPCE価格指数は0.3%上昇だった。5月の前年同月比は1.5%上昇と、前月の1.6%上昇から鈍化した。 

変動の大きい食品とエネルギーを除いたPCEコア指数は前月比0.2%上昇。前月も同じ伸び率だった。5月の前年同月比は1.6%上昇だった。PCEコア指数の前年同月比は、FRBが物価の目安として注目している。昨年3月にはFRBが目標とする2%上昇に12年4月以来初めて達していた。 

ムーディーズ・アナリティクス(ペンシルベニア州)のシニアエコノミスト、ライアン・スウィート氏は「インフレが目標を下回っていることはFRBにとり頭痛の種だが、FRBが利下げに傾いている主な要因ではない」と指摘。「FRBは成長を巡る懸念に基づき緩和バイアスに傾いている。低インフレにより将来的な一段の利下げに対するハードルは低くなっている」と述べた。 

このほか、JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「消費は低調だった年末年始と比べると明らかに底堅くなったが、このところは想定されたほど勢いはなくなっているようにみえる」と指摘。RDQエコノミクス(ニューヨーク)の首席エコノミスト、ジョン・ライディング氏は「通商と関税政策を巡る新たな不確実性の台頭、および世界的な供給網と設備投資に対する影響が製造業活動にマイナスの影響を及ぼしているという事実が今回の統計で改めて確認」と述べた。 

物価は今年、2%目標を下回っている。FRBは先週、2019年の物価見通しを1.5%とし、3月時点の1.8%から引き下げ。パウエル議長は弱い物価が「一時的」との文言を外した。緩慢な物価のほか、米中貿易摩擦の高まりによる経済のリスクを指摘し、早ければ7月にも利下げすることを示唆した。 

昨年の大規模な減税や財政出動の効果が薄れる中、景気は減速している。製造業は苦戦しており、雇用の伸びは鈍化し、住宅市場は弱いままだ。 

アトランタ連銀が示す第2・四半期GDP見通しは年率で1.9%増。 

5月の個人所得は2カ月連続で0.5%増。賃金は0.2%増だった。前月は0.3%増加していた。 

貯蓄は9854億ドルと、前月の9750億ドルから増えた。 

ナロフ・エコノミック・アドバイザーズ(ペンシルベニア州)の首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「所得の伸びが消費支出の支援要因になっているが、賃金の伸びが鈍いことが成長を脅かす要因であることには変わりない」と述べた。