日本政府が発表した韓国への半導体材料の輸出規制強化により、素材分野での対日依存度が高い韓国経済が大きな影響を受けることは必至だ。韓国企業が保有する材料の在庫は3~4カ月分しかなく、生産ラインの停止も予想される。ただ、世界屈指のシェアを持つ韓国から半導体部品の出荷が滞れば、その供給を受ける日本メーカーへの余波も避けられない。
韓国では日本から供給される半導体の材料や製造装置が占める割合は70%とされ、半導体で輸出全体の20%以上を占めるサムスン電子やSKハイニックス、LG電子などへの打撃が不可避とみられている。韓国企業も材料を供給しているが、日本製品の品質の高さも加わり、「日本企業の技術力に追いつけない」のが現状だ。
各企業が現在確保する材料の在庫は約1カ月分で、完成品の在庫を加えても3~4カ月しか持ちこたえられない。工場の生産ラインが停止する可能性も指摘されている。韓国政府は世界貿易機関(WTO)への提訴を検討しているが、結論が出るまでには1年半~2年かかり、韓国にとっては勝訴した場合の利益よりもその間に生じる損失の方が膨大になりそうだ。
一方、日本側も無傷ではいられない。
スマートフォンやテレビなどの画面に使用される有機ELパネルの世界シェアは、サムスンやLGといった韓国企業が圧倒的なシェアを占める。スマホやデータセンターのデータ保存に使うNAND型フラッシュメモリーでもサムスンやSKハイニックスなど韓国企業が強い。これらの部品を使って製造する日本の電機メーカーの生産計画に狂いが生じる可能性があり、「個別の調達先はお答えしていないが、事態を注視している」(パナソニック)という状況だ。
日本総合研究所の向山英彦上席主任研究員は「韓国の半導体メモリー輸出先は中国・香港が約8割を占め、日本向けは1割にも満たないが、今回の規制強化で中国での生産に影響が出れば、中国に進出する日本企業にも波及するだろう」と指摘している。(桑原雄尚、ソウル 名村隆寛)