韓国への輸出規制を厳しくする日本の措置について韓国政府は10日未明、スイスで行われたWTO=世界貿易機関の理事会で発言し、日本の措置は貿易ルールに反していると批判し撤回を求めました。これに対し日本は「国際ルール上全く問題ない」と反論し、国際機関の場で激しい対立となりました。
スイス・ジュネーブのWTOの本部では日本や韓国を含む加盟国が参加する理事会が10日未明まで開かれました。
この会議の最後に韓国のペク・ジア(白芝娥)大使が発言し、日本政府が半導体の原材料などの韓国向けの輸出規制を厳しくしたことについて、「対象になっているのは韓国だけで、WTOの規定に反している。G20大阪サミットで自由貿易の重要性を主張したことに反している」と批判しました。
そのうえで「日本の措置は、韓国だけでなく世界全体の産業に悪影響を与える」と訴えて、撤回を求めました。
これに対して日本の伊原純一大使は「安全保障上の懸念に基づく貿易管理の見直しで、WTOのルール上、全く問題ない」と反論し、ほかの加盟国に理解を求めました。
韓国では9日、国会で、イ・ナギョン(李洛淵)首相が「WTOへの提訴は必要だ」と述べたほか、カン・ギョンファ(康京和)外相も「韓国企業の被害を最小に抑えられるよう対応を模索していてWTOへの提訴も準備している」と述べており、今後、提訴に向けた手続きに踏み切るかどうかが焦点になっています。
韓国の発言要旨
韓国政府はWTOの理事会での発言の要旨を発表しました。
それによりますと、「日本の輸出規制は韓国だけを対象にしている。日本は信頼が損なわれたことを理由にしているがWTO協定にはそれを理由に輸出規制をする根拠はない」としています。
また、先月のG20大阪サミットに触れ、「日本は議長国として、自由で公正な貿易の重要性を主張した。その直後にこのような措置を発表したことは遺憾だ」としています。
そのうえで、「日本の措置は、韓国の産業だけでなく、日本企業を含む世界的な供給網や産業に悪影響となる」として日本に輸出規制の撤回を強く求めています。
日本大使「ルール上全く問題ないと説明」
ジュネーブ国際機関日本政府代表部の伊原純一大使は、理事会のあとNHKなどの取材に対し「禁輸の措置ではなく安全保障に関する貿易管理上の見直しであり、韓国を簡素化手続きの対象から通常に戻す措置だ。したがってWTOのルール上全く問題ないと説明した」と述べました。
ただ、韓国がWTOへの提訴を検討していることについては、「仮定の話は答えられない」と述べるにとどまりました。一方、韓国のペク・ジア大使は記者団の取材に応じず、その場をあとにしました。