[ニューヨーク 11日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、ドル指数が約3カ月ぶりの低水準を付けた。米中通商協議の進展への期待のほか、英国が条件などで合意しないまま欧州連合(EU)を離脱することは避けられるとの観測を受けリスク選好度が回復し、安全資産としてのドル需要が低減したことが背景。
米中は前日にワシントンで閣僚級通商協議を開始したが、トランプ米大統領はこの日、「ここしばらく好感が高まっている。皆が何か大きなことが起きるのを期待している!」とツイッターに投稿。中国は関税引き上げ回避に向け「部分的な」合意は排除しないとの姿勢を示した。
その後、取引終盤になりトランプ大統領は米中通商協議で部分的な合意が得られたと表明。知的財産権保護や金融サービスなどの分野で合意が得られたことを明らかにした。これを受け、ドルは対ユーロでの下げ幅を縮小するなどの動きが出た。
OANDA(ニューヨーク)のシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は「中国との部分合意ではほぼ予想通りの結果が得られた」とし、「より大きな問題が残っているため、短期的に広範な合意が得られると必ずしも楽観できるわけではないが、それでもプラスのニュースだった」と述べた。
英国のEU離脱(ブレグジット)を巡っては、EUが離脱協定案を巡る合意に向けて今後数日踏み込んだ協議を行うことで英国と合意したと表明。EUのバルニエ首席交渉官と英国のバークレイ離脱担当相はこの日の会談について、「建設的な」話し合いだったと評価した。
この日は、円やスイスフランなど他の安全通貨も下落。スコシアバンク(トロント)の首席外為ストラテジスト、シャウン・オズボーン氏は「米中協議とブレグジットの進展を受け、リスクプレミアムは低下した」と述べた。
ブレグジットを巡り楽観的な見方が出てきたことで英ポンドは対ドルで約3カ月ぶりの高値を更新。エクスチェンジ・バンク・オブ・カナダ(トロント)の外為戦略部門責任者、エリック・ブレガー氏は、オプション市場で英ポンドのリスクリバーサルが急上昇していると指摘。こうした動きは、オプション市場で英ポンドが対ドルで新たな段階に入ったとの見方が出ている可能性を示唆していると述べた。
米連邦準備理事会(FRB)はこの日、銀行システム内における「潤沢な準備」の確保に向け、月額約600億ドルの財務省証券の買い入れを開始すると発表。ただ、このほど見られた短期金融市場の逼迫に対応する「テクニカル」なもので、金融政策スタンスの変更ではないとした。
スコシアバンクのオズボーン氏はこれについて「前月末に見られた逼迫のリスクが低減するため、ドルの押し下げ要因にはならない」との見方を示した。
終盤の取引で主要6通貨に対するドル指数.DXYは0.4%低下の98.318。一時は98.197と、3カ月半ぶりの低水準を付けた。
ユーロ/ドルEUR=は0.3%高の1.1034ドル。 ドル/円JPY=は0.3%高の108.33円。一時は2カ月半ぶりの高値を付けた。
英ポンドは対ドルGBP=D3で1.2708ドルと約3カ月ぶりの高値を更新。終盤の取引では1.7%高の1.2657ドルとなっている。対ユーロEURGBP=D3では87.02ペンスと、5カ月ぶりの高値を付けた。