[ミラノ/パリ 31日 ロイター] – 自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)(FCHA.MI)と仏PSA(PEUP.PA)は31日、対等合併に向けた作業を進めることで合意したと発表した。経営統合が実現すれば、世界4位の自動車メーカーが誕生し、自動車業界で新たな再編の波が起こる可能性がある。
FCAは5カ月弱前に仏ルノー(RENA.PA)との統合交渉を打ち切った経緯がある。
FCAとPSAは共同声明で「(PSA)プジョーの監査役会とFCAの取締役会はそれぞれ、対等合併に向けて作業を進めることを全会一致で決定した」と表明。両社の経営チームが、数週間内に協議をとりまとめ覚書を作成する方針という。
統合会社の拠点はオランダに置き、会長にはFCAのジョン・エルカン会長が、最高経営責任者(CEO)にはPSAのカルロス・タバレスCEOが就く予定。取締役会は、PSAからタバレスCEO含め6人、FCAからはジョン・エルカン会長含む5人の計11人で構成。パリ、ミラノ、ニューヨークに株式を上場する予定としている。
FCAのマイク・マンリー最高経営責任者(CEO)は「正式な合意に達するまで為すべきことは多いが、経営統合により両社が得られる機会は極めて大きい」と述べた。
統合によって、工場を閉鎖せずに年37億ユーロ(41億ドル)のシナジーを予想。うち80%程度を4年以内に達成可能としている。
共同声明は「CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)という新たな試練とともに急速に変化する環境において、統合会社はグローバルなR&Dの実績とエコシステムを活用してイノベーションを強化し、スピードと資本の効率性をもって試練に立ち向かうことができる」とした。
両社合わせた年間販売台数は870万台。「フィアット」、「クライスラー」、「プジョー」、「マセラティ」、「オペル」など、大衆車から高級車まで幅広いブランド、さらに商用車も取り扱うグループとなる。
統合によってFCAはPSAの汎用性のある自動車技術を取り入れることができ、PSAはFCAが強みを持つ北米で存在感を高められるというメリットがある。
統合完了前に、FCAは株主に55億ユーロの特別配当を支払い、保有する産業用ロボット製造部門コマウ株式を分配する。プジョーは、自動車部品フォルシア(EPED.PA)株46%を株主に分配する。
ルメール仏経済・財務相は、合意を歓迎し、経営統合によって、環境技術への投資や業界の試練に対応するのに必要な規模を持つことになると述べた。
仏政府はPSAの株式12%を保有。日産自動車(7201.T)とアライアンスを組むルノーの株式15%も保有しており、ルノーとFCAの合併協議破談の要因を作ったとされている。
イタリアのパトゥアネッリ経済開発相は、国内の雇用が影響を受けない限りFCAとPSAの統合を歓迎する意向を示した。
この日の取引でFCA株は一時11%高の14.248ユーロと、1年ぶりの高値を付けた一方、PSA株は一時14%安の22.33ユーロと、2週間ぶりの安値を付けた。
ジェフリーズのアナリスト、Philippe Houchois氏は、市場価値や配当金の相違などを踏まえると、対等合併の実現にはPSAが実質的に32%のプレミアムを支払う必要があると指摘。「PSAの株主はFCAの株主よりも大きな市場リスクを見込んでいる」と述べた。ただPSAとFCAの経営統合は、自動車業界で最も論理的で魅力的な組み合わせとの考えを示した。
現在FCAの株式29.2%を保有するアニェッリ家が経営統合後の企業の株式14.5%を保有する筆頭株主となる。