【ワシントン時事】トランプ米大統領のウクライナ疑惑で、下院委員会はこの2週間、12人の高官・元高官から公開の場で聴取した。トランプ氏が政敵バイデン前副大統領の捜査をウクライナに求めようと職権を乱用した証拠が着々と積み重ねられている。一方、与党共和党はトランプ氏擁護で結束を崩していない。
「個人的利益のために職権を利用し、安全保障政策をむしばんだ証拠は明白だ」。野党民主党のペロシ下院議長は21日の記者会見で、年内のトランプ氏弾劾訴追に自信を見せた。
計72時間に及んだ公聴会のハイライトは20日のソンドランド駐欧州連合(EU)代表部大使による証言。ウクライナへの工作が「トランプ氏の指示」で行われたと述べ、ポンペオ国務長官ら多くの政権幹部が関知していたと明言した。
権力乱用を立証するポイントは、7月のゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話会談直前に凍結した軍事支援をトランプ氏がどう考えていたかだ。公聴会では多くの高官が、軍事支援が捜査の「交換条件」と認識されていたと証言。一方、共和党はトランプ氏の口から直接聞いた高官がいないと反論する。
「動かぬ証拠」を提示する可能性のあるボルトン前大統領補佐官の証言や内部文書の開示は、訴訟を示唆する政権の抵抗でハードルが高い。早期決着を目指すペロシ氏は「法廷(闘争)に翻弄(ほんろう)されてはならない」と警戒する。
史上3人目となる弾劾訴追は、民主党の賛成多数で実現する可能性が高い。だが、年明けにも始まる上院の弾劾裁判でトランプ氏を罷免するには、53人の共和党上院議員のうち少なくとも20人の賛成が必要。9月の弾劾調査開始以降、世論調査でのトランプ氏の罷免賛成は48%前後で頭打ちで、共和党支持者や議員に賛同は広がっていない。
トランプ氏は22日、FOXニュースの番組でペロシ氏を「寄生虫のように頭がおかしい」と批判。「率直に言おう。弾劾裁判は望むところだ」と強気の姿勢を示した。