今年7月、中国が4年ぶりに発表した国防白書は、国際情勢を不安定化させているとして米国を名指しで非難し、中国の軍事戦略に立ちはだかる米国への対抗姿勢を明確にした。ただ空母戦略の後退を象徴として、中国の軍拡路線には暗雲が垂れ込めている。
北京の軍事筋は、中国の海軍建設のモデルが「空母打撃群を核心とする米国海軍だ」と説明。一方、経済減速の中で巨大な陸軍の維持や空軍、ロケット軍の装備更新にも多額の支出が必要となり、海軍が十分な財源を得られるかは疑わしく「現在の急速な艦艇建造ペースは今後減速していく」と指摘している。
国産空母への導入を検討している電磁式カタパルトや原子炉などの実用化が遅れている現状も、最新技術の開発を支える巨額資金の不足をうかがわせる。
米国が安全保障面も含めて対中圧力を強めていることが、空母の部品調達に影響し、建造の遅れにつながっているとの分析もある。軍事専門家は「2隻目以降の国産空母は旧ソ連海軍の空母とは異なる部品が必要になるので、西側諸国からの調達が滞れば建造に影響が出る可能性はある」と話した。(北京 西見由章)