[ワシントン/リオデジャネイロ 2日 ロイター] – トランプ米大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課すと表明した。両国の意図的な通貨切り下げで米農業部門が圧迫されているとの考えから報復措置を打ち出したものとみられる。 

トランプ大統領は早朝、ツイッターに「ブラジルとアルゼンチンは大規模な通貨切り下げを実施してきた。これは米国の農業部門に良くない。このため、両国から米国に輸出される鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課す」と投稿した。ただこれ以上の情報は明らかにしなかった。 

この件に関して米国務省、および米通商代表部(USTR)担当者からコメントは得られていない。 

ブラジルのボルソナロ大統領はトランプ氏と直接協議する意向を表明。現地ラジオ局のインタビューで「報復措置とは考えていない」と指摘。「米経済はわれわれの経済と同規模ではなく、何倍も大きい」とし、「関税を課さないようトランプ氏に電話するつもりだ。ブラジル経済は基本的にコモディティーで成り立っている。トランプ氏が理解してくれることを望む。われわれの主張を聞いてくれると確信している」と述べた。 

その後、ブラジル政府は声明で、米政府とすでに協議を開始したと表明。関係筋は、ブラジル政府は米国に対しブラジル中央銀行はレアル相場の引き上げに努めているとし、米国が指摘している為替操作の疑いを否定したとしている。 

アルゼンチンのシカ生産・労働相はトランプ氏の発表について「予想外」だったと表明。午前中に米国の措置への対応を協議したとし、より詳細な情報を得るために米国のロス商務長官との会談を望んでいると述べた。また、外務省も米国務省との交渉を始めると明かした。 

シカ生産相によると、アルゼンチンが今年米国に輸出した鉄鋼・アルミニウムはこれまでに金額ベースで約7億ドル。 

トランプ大統領はこのほか「連邦準備理事会(FRB)は多くの国がドル高をうまく利用することを防ぐために行動を起こす必要がある」と投稿。FRBに対し他の国が通貨切り下げを通して経済的な利益を得ることを防止するよう呼び掛け、「FRBは金利を引き下げ、(政策を)緩和する必要がある!」と投稿した。FRBは10─11日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。 

トランプ氏の投稿を受け、中南米市場では株式やメキシコペソがこの日の安値に下落した。ただブラジルではこのほどの通貨レアルの急落を受け中銀が市場介入したほか、アルゼンチンでは通貨ペソ防衛に向け政府が資本規制を導入。両国が意図的に自国通貨を切り下げているとトランプ氏が非難したことは疑いの目をもって受け止められている。 

ブラジルの鉄鋼ロビー団体、Instituto Aco Brasilは声明で、レアルは自由変動通貨であるため、ブラジル政府はレアル相場を操作できないと指摘。「米国の農業部門の『損失を補填する』手段としてブラジルの鉄鋼に関税を掛けることは、ブラジルに対する報復措置である」とし、「このような決定で結局は米国の製鉄業界が打撃を受ける」とした。 

トランプ氏のツイートを受け、米株式市場ではUSスチール(X.N)やAKスチール(AKS.N)などの鉄鋼株に買いが入った。