【ソウル=豊浦潤一、北京=中川孝之】韓国を訪問している中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相が4日にソウルで行った康京和(カンギョンファ)外相との会談で、米国の中距離ミサイルを韓国に配備しないようくぎを刺していたことが中韓関係筋の話でわかった。
米国とロシアによる中距離核戦力(INF)全廃条約が8月に失効したことを受け、米軍の中距離ミサイルを「中国の玄関口」(中国外務省高官)に配備しないよう直接警告したものだ。
王氏の訪韓は2015年10月以来、約4年ぶりとなった。米最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD=サード)」が2017年に韓国に配備され、反発した中国が報復措置を取ったことで中韓関係は冷却化した。
王氏は5日、大統領府で文在寅ムンジェイン大統領とも会談し、国際社会が「一国主義、強権政治の脅威を受けている」と語った。来年の在韓米軍駐留経費の韓国側負担を決める交渉で、米国が今年の5倍以上の増額を要求していることを念頭に米韓の離間を狙った発言とみられる。中韓両政府の発表によると、王氏は4日の康氏との会談でも「強国が弱い国をいじめることに反対する」と述べていた。
王氏は康氏との会談で、中韓の文化交流などを促進する政府間の委員会を開くことで合意した。中国ではTHAADへの報復の一つとして、韓国ドラマの放送や韓国歌手の公演などが制限されている。中国は措置の解除を示唆し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長問題で米国との関係がぎくしゃくする韓国を取り込む狙いとみられる。