• 10年規模のコストとして200億円拠出、研究と企業の結び付きが重要
  • 米中が競い合う中で日本は「蚊帳の外」、起業チャンスを与える

国内通信会社のソフトバンク東京大学は6日、世界最先端の人工知能(AI)技術の開発を目指し、「Beyond(ビヨンド) AI研究所」を開設すると発表した。研究成果の事業化に向け、協力して取り組む。

  ソフトバンクグループの孫正義社長は記者会見し、「これからはAI。東大と組むことで学生たちにも学ぶ機会を増やし、起業するチャンスを与えていきたい」と語った。ソフトバンクGが運営するビジョンファンドの投資先とも連携する。

SoftBank Group CEO Son Masayoshi Presents Earnings Figures
東大とAI研究所を設立する孫氏

  孫社長は、米国ではグーグルのように世界的なテクノロジー企業が次々誕生したが、日本では「世界にインパクトを与える会社が少ない」と指摘。AIを巡り米国と中国が競い合う中、「日本は蚊帳の外」だと述べた。研究所の設立により、「人材やアイデア、資金が回っていく仕組みを作りたい」という。

  ビヨンドAI研究所は拠点を2カ所に設置し、基礎研究領域を東大本郷キャンパス、応用研究領域をソフトバンクの竹芝新オフィスに置く。健康医療、公共・社会インフラ、製造分野をターゲットとし、大学と企業の迅速な合弁会社設立を後押しする経済産業省のCIP制度を積極的に活用する。

  ソフトバンクの宮川潤一副社長によると、10年規模のコストとして拠出額は200億円、研究員は150人程度を想定。「日本の学生の力量は世界に劣っているとは思わない。ただ、基礎研究に追われている印象があり、日本でAIに強い会社が出てくることを望んでいる」と述べた。

「若い起業家を支援」

  これに先立ち孫社長は、中国の電子商取引会社であるアリババ・グループ・ホールディング創業者の馬雲(ジャック・マー)氏と東大安田講堂で行われたフォーラムで対談した。

SoftBank Chairman Masayoshi Son and Former Alibaba Group Chairman Jack Ma Discuss at Tokyo Forum
ジャック・マー氏と対談する孫氏Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  孫社長はAIへの投資について「私にとって重要なのは最も優れたテクノロジーの発見と若い起業家を支援することだ」と強調。世界のAI企業に対してはビジョンファンドで既に900億ドルを投資しており、「ファンド2を同じ規模で用意している。今回は若い起業家を助けるための大きな変化を起こすため、十分な資金を準備した」とも話した。