【ベイルート時事】大久保武駐レバノン大使は7日、アウン大統領とベイルート近郊の大統領府で会談した。日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡について「不法に出国し、誠に遺憾だ」と表明。「わが国として到底看過できるものではない」と伝え、事実関係の究明を含めた必要な協力を正式に要請した。
レバノン政府、関与否定に躍起 対日関係悪化を懸念―ゴーン被告無断帰国
これに対しアウン大統領は「日本との関係を重視しており、全面的な協力を惜しまない」と応じた。ただ、逃亡に関しては「レバノン政府は全く関与していない」と説明した。
会談は日本側から求めた。ゴーン被告については、国際刑事警察機構(ICPO)が日本の要請に基づき、身柄拘束を求める手配書を出している。だが、レバノンは日本と犯罪人引き渡し条約を結んでいない上、国内法で自国民の外国政府への引き渡しを禁じており、引き渡しを拒否する姿勢を重ねて示している。
ゴーン被告の日本出国にはレバノン政府の関与が指摘されているほか、同じキリスト教マロン派であるアウン氏と被告は近い関係であることも知られている。レバノン検察は今週、ゴーン被告への事情聴取を行う見通しだが、日本の協力要請にどこまで応じるかは不透明だ。
大統領府は会談後、ツイッターで「レバノンと日本の関係とビジネスマンのゴーン氏の件について大使と協議した」と表明した。
一方、レバノンの国会議員で、日本との友好議連会長を務めるアライン・アウン氏は7日、取材に応じ、8日に予定されるゴーン被告の記者会見について「日本との2国間関係を傷つけるような発言を控えてほしい」と述べた。
ただ、被告の身柄引き渡しに関しては「あり得ない」と断言し、捜査が必要なら日本の要請に基づき、レバノン当局が行うべきだという認識を示した。