• 皇太子からのメッセージ受信がデータ盗難につながったと示す証拠
  • ベゾス氏顧問はサウジが電話データにアクセスと昨年主張していた
ジェフ・ベゾス氏
ジェフ・ベゾス氏 Photographer: Matthew Staver/Bloomberg

米アマゾン・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)で米紙ワシントン・ポストのオーナーでもあるジェフ・ベゾス氏の携帯電話が、同氏とサウジアラビアのムハンマド皇太子によるメッセージアプリ「ワッツアップ」上のやり取りの後にハックされた。ハッキングの分析結果に詳しい関係者2人が明らかにした。

ハッキング発生前に皇太子からベゾス氏に送られた2018年半ばのメッセージは穏やかな内容に見えたが、同氏の携帯がハッキング被害に遭う事態につながったコードが隠されていたことを示す証拠が調査で見つかったという。調査の非公開を理由に関係者1人が匿名を条件に語った。別の関係者によれば、皇太子が使用したワッツアップのアカウントが関与していた可能性がやや高いことが分析によって示された。

英紙ガーディアンは21日、ベゾス氏の携帯からのデータ盗難は18年にムハンマド皇太子の個人アカウントから動画の感染ファイルが送付されたことが始まりだったことを分析が示したと報道。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、分析は世界的なビジネス助言会社FTIコンサルティングが実施。同紙がその内容を確認した。FTIの担当者は「顧客との関与あるいは関与の可能性についてコメントや確認、否定はしない方針だ」と述べ、コメントを控えた。

ベゾス氏と妻のマッケンジーさんは昨年1月、25年の結婚生活に終止符を打つと発表。タブロイド紙ナショナル・ エンクワイアラーはそれから間もなく、ベゾス氏と元テレビ司会者ローレン・サンチェス氏の不倫関係について報じた。

Crown Prince Mohammed bin Salman
ムハンマド皇太子写真家:ゲッティイメージズを介したベルント・フォン・ユトルツェンカ/ dpa /写真同盟

ベゾス氏はその後、不倫暴露の報道の背後に政治的な動機や外部勢力の存在はないと同氏自身が公に確認しなければ、さらに気まずくなる内容のテキストメッセージや写真を掲載するとナショナル・ エンクワイアラーに脅迫されたとブログ投稿で主張した。

ベゾス氏のセキュリティー担当顧問を務めるギャビン・デベッカー氏は昨年、不倫関係をナショナル・エンクワイアラーが暴露する前にサウジ政府がベゾス氏の電話データにアクセスしていたと指摘。それを直接裏付ける証拠は示さなかった。

サウジ記者殺害事件で厳しい追及

デベッカー氏は当時、ムハンマド皇太子がベゾス氏を痛めつけようとする理由として、サウジ人記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件をワシントン・ポストが厳しく追及する取材を行っていたことや、ナショナル・エンクワイアラーとサウジのビジネス関係を挙げた。ワシントン・ポストは、カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件について、米中央情報局(CIA)は皇太子が暗殺を命じたと断定したと報じていた。

デベッカー氏は21日、昨年時点での主張以上の内容に触れることを控えた。アマゾンの担当者はコメントを求めるメッセージに返答しなかった。

サウジ大使館は、ハッキングに同国が関与したとの報道は「ばかげている」とツイッターへの投稿で反論。「全ての事実が明らかになるよう」調査を求めるとした。

Saudi Embassy@SaudiEmbassyUSA

Recent media reports that suggest the Kingdom is behind a hacking of Mr. Jeff Bezos’ phone are absurd. We call for an investigation on these claims so that we can have all the facts out.

ワシントン・ポストは21日遅く、22日に公表される国連の調査報告書はベゾス氏の携帯がムハンマド皇太子からのワッツアップのメッセージ受信後にハックされたことを確認する見込みだと報じた。

原題:Saudi Crown Prince Hacked Bezos’s Phone, Analysis Suggests (1)(抜粋)